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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2016年6月 4日

打ち上げ日に関する新しい情報はありません。
当初の予定通り6月24日打ち上げとすると、7日にはここ星の街を出発することになっているので、この週末はそれに向けた荷造りをしようと思います。
ISSからの帰還時のことも考えて荷造りをしなければいけないので、よーく考えてやらないと。

さて、今日は以前お約束していた4周回ランデヴーと34周回ランデヴーについて少し解説をしたいと思います。

まずは何よりも、ISSとのドッキングまでに要する時間が全然変わってきます。

4周回ランデヴー  ⇒ 6時間
34周回ランデヴー ⇒ 2日間

以前は、ソユーズは全て34周回でドッキングしていましたが、その後コンピューターやロケットの打ち上げ精度向上に伴い、現在では4周回が基本になっています。

この違いを説明するためには、その背景となるソユーズの通信事情についてお話しする必要があります。

ソユーズは、地上と24時間情報をやり取り出来るわけではありません。
大雑把に言うと、ロシアの上空を飛んでいる時だけ地上はソユーズの状態を把握することが出来ますし、クルーと音声通信を行うことが出来ます。
これは、通信に地上のアンテナからの電波を使用しているからです。
ちなみに、国際宇宙ステーションISSは、衛星通信の利用により、通信のカバレッジはソユーズと比べて飛躍的に向上しています。

さて、このロシア上空を飛んでいる間だけ、というのがポイントです。
ソユーズは地球の周りをグルグル回って飛行していますが、地球はそれと別に自転しています。
実際はもっと複雑ですが、わかりやすく言うと、ソユーズが地球を1周回ってくる間(約90分間)に地球も自転しているので、ソユーズは1周前と同じ地点の上空には戻ってきません。
少しずれた地点の上空に飛んできます。
そうやって少しずつ、東から西に、地上での航跡がずれていくのです。

このため、ロシアは広大な国土を持っているとは言え、ソユーズがその上空を飛行するのは、せいぜい1日の中で4周回程度になります。
それ以外は、ずっとソユーズはロシア以外の上空を飛んでいます。

ここで先ほどの通信の話に戻ると、地上の管制センターがソユーズの状態を把握できて、クルーと交信できるのは今のところ、1日の中で合計でも1時間ちょっとしかないということになります。
(今後、ソユーズに衛星通信システムが導入されていくので、この辺りも改善されていくことになると思いますが)

ところで、ソユーズに限らず、宇宙機はロケットによって軌道に投入された後、何らかの方法でその位置を詳細に決定してやる必要があります。
実際のロケットのエンジンの調子や、重心位置の違い、そのほか諸々の要素によって、宇宙機はピッタリと予定通りの軌道に投入できるわけではないのです。
軌道投入後、その位置情報を算出し、それを元にその後のエンジン噴射を計算してやる必要があります。

従来のソユーズは、それらの計算の大部分を地上に依存していたので、このロシアの上空を飛行するせいぜい4周回くらいの間にISSまでドッキングするというのが難しかったのです。
例えば、ある周回で位置情報を決定し、それに基づいたエンジン噴射のデータをソユーズに送れるのは、さらにその1周回後といった感じです。

結果的に、ISSとのドッキングまで2日間を要していました。

その後、ソユーズのメインコンピューターの性能向上や、ロケットの打ち上げ精度の向上により、この2日間のプロセスを効率化することが出来るようになり、現在の4周回ランデヴーが可能になったというわけです。
バイコヌールから打ち上げられた後、軌道がまだロシアの上空を飛んでいる間に、一気にISSに接近することが可能になったのです。

当然のことながら、その4周回の間に何か予定外のことが起きたら、例えばエンジン噴射を予定のタイミングで行えなかったりした場合、もう4周回でISSまでドッキングすることは不可能になります。
その場合は、従来の34周回の方式に途中で切り替わることになります。
過去に1度、その例があります。

4周回と34周回の違い、お分かりいただけたでしょうか?

最後に、私たちのソユーズがなぜ今更34周回ランデヴーになるか、です。
以前にもご紹介しましたが、MS型機ではGPSを利用したナビゲーションが可能になります。
先ほどの、位置情報の決定に、GPSが使用できるというわけです。
もちろん、ソユーズ宇宙船では初めての試みになるので、地上としてはしっかりとその新しいシステムが機能しているかを、時間をかけて確認していきたいのです。
そのため、MS初号機では34周回で時間をかけながら、ISSとのドッキングを目指すことになります。


今日のリンクは、第48次/49次長期滞在のプレスキット(報道向け資料)です!
250ページ近いかなりのボリュームですが、それだけに情報量満載です。
ご興味のある方はどうぞ。


大西 卓哉 ISS長期滞在ミッション 記者説明資料



 
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