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2015年11月 6日
昨日は「ロシア統一の日」という祝日で、訓練はありませんでした。
お陰でしっかりと準備をして今日の訓練に臨むことができました。
朝イチは午後に行われるソユーズシミュレーション訓練の事前ブリーフィングがあり、そのあとはソユーズのモーションコントロールシステムに関する座学がありました。
モーションコントロールシステムというのは、宇宙船の姿勢制御や軌道変更、ISSとのドッキング、地球への帰還などをコントロールするためのシステムで、最重要のシステムと言っても過言ではありません。
ソユーズのレフトシーターは、このシステムについて学ぶために数か月に及ぶ座学を受けます。
教官は私の大好きな教官の1人である、Viktor Suvorov氏。
この方はもう45年以上もガガーリン宇宙飛行士訓練センターで働いていらっしゃる方で、私は勝手に「マスターヨーダ」と呼んでいます。
もう70歳を超えていらっしゃるのですが、いまだ現役で講義を担当され、パワーポイントのスライドを駆使しながら教えて下さる姿には、いつも感銘を受けます。
午後は、ソユーズのシミュレーション訓練がありました。
総合試験前の3回のうち、これが2回目になります。
今回は、アナトーリと2人で、ソコル宇宙服を着用しての訓練です。
宇宙服を着こんだ状態の不自由さにはだいぶ慣れてきました。
というか、どういうところに気を付けなければいけないかがわかってきています。
例えば、カプセルに乗り込んですぐに自分のシートに身体を沈めるのではなく、まずはシートベルトのハーネスを最大まで緩めた状態であとで自分が取りやすい位置にセットしておきます。
こうすることで、宇宙服を着て狭いシートに座った状態でも、ハーネスを探し回ることなくスムーズに着用できます。
そういった細かい工夫の積み重ねで、不自由さと上手く付き合えるようになってきたと言えるでしょう。
今日のシナリオは、ISSとのランデヴーフェーズ開始からドッキングまでです。
ISSまで約80㎞のところからスタートし、数回のエンジン噴射を行って、ISSに接近していきます。
ソユーズがISSに接近していく過程では、Kurs(クルス)よ呼ばれる航法システムを使用します。
レーダーと同じような仕組みで、電波を用いて、ISSのいる方角や距離、相対速度などのデータを測定するシステムです。
そのシステムの調子が悪く、ISSまで400mまで近付いたところで、アナトーリが手動操縦に切り替えました。
以後は目視の情報を頼りに、目的のドッキングポートの前方まで回り込んで、無事にISSとのドッキングを果たしました。
ところが、今度はドッキングシステムに異常があって、ISSとの正常なドッキングが出来ません。
本来であればソユーズ側から伸びた棒をISS側がキャッチして、その棒を引き込むことによってドッキングされるのですが、この棒の引き込みがどうしても実行できないのです。
地上からの指示に従って、色々と試してみたのですが結局引き込みが完了できず、ISSとのドッキングを断念することに。
地球に帰還するために、ISSからアンドッキング(離脱)したところで、今度はカプセルの計器パネルから大量の煙が!!
ヘルメットを閉めて、カプセル内の空気の循環を全て止め、全ての電気機器の電源を落とします。
こうすることで、火災元への酸素の供給を止め、さらに熱源も落とすことになるので、理論的にはほとんどの火災が消火できるはずです。
これで消火出来れば良いのですが、煙は一向に収まる気配を見せません。
そこで最後の切り札として、カプセル内の空気を抜いて真空にする手順を開始します。
その為には、ソコル宇宙服の気密性をチェックしてやる必要があります。
いざ真空にしてみたら、宇宙服から空気が抜けていきましたではシャレになりません。。。
無事に2人とも、宇宙服がしっかりと気密性が維持されていることを確認できたので、バルブを開いてカプセルの空気を全て抜いてしまいました。
あとは宇宙服に酸素を供給しているタンクが空になる前に、地球に帰還しなければなりませんので、緊急帰還の手順になります。
これはもう、これまでの訓練で何度もやってきたところなので、アナトーリと私で作業を分担しながらテキパキと短時間でエンジン噴射の準備を整え、軌道離脱噴射を所定のタイミングで開始することが出来ました。
最後のおまけとばかりに、今度はメインエンジンが停止してしまいましたが、これもはっきり言って想定の範囲内(笑)でしたので、速やかに補助エンジンに切り替えて事なきを得ました。
こうしてみると、シミュレーション訓練を開始したころとは比べ物にならないくらい、チームとして不具合への対応能力がついたと思います。
デブリーフィングでも、インストラクターは私たちのパフォーマンスに満足のようでした。
残すシミュレーション訓練は、あと1回。
来週からケイトが合流しますので、最後の1回は3人で臨むことになります。
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