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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2015年2月13日

ソコル宇宙船のリークチェック、このあと信じられないミスを(出典:JAXA)

5週間にわたる今回のロシアでの訓練が終わりました。

午前中は、2時間に及ぶISS生命維持システムの口答試験。
NASAでの試験というと、生徒と教官、スーパーバイザーの3人といった最低限の人数で、どちらかと言えばクローズドな印象なのですが、ここ星の街での試験は全く違います。

今日の試験では、インストラクターが3人、実際にシステムを開発したエネルギアという会社から専門家が2人、インストラクターの上司が1人という、計6名の豪華攻撃陣による、さながら圧迫面接のような雰囲気のなか行われました。

試験の流れは、試験官からの質問に次々答えていき、最後に自分の成績を5点満点で評価されるというものです。

今日は序盤から怒涛の猛攻を受け、終始相手のペースで試合が進みましたが、こちらも粘りに粘りついに決定的なチャンスは相手に与えず、最後までゴールは割らせませんでした(イメージ)。

試験を無事に終え、午後はソユーズシミュレーション訓練の中間チェックです。
全体のほぼ半分の回数のシミュレーションをこれまで受けてきたので、他のインストラクターたちを呼んで進捗状況をチェックしてもらおうというものです。

ISSからのアンドッキング~着陸までのシーケンスを行い、その間に投入された不具合の数、大きいものから小さいものまで含めなんと12個。
良かったところも悪かったところもありました。
1番のミスは開始早々でした。

アンドッキングの前には、まず各システムの状態を確認して、そのあとソコル宇宙服のリークチェック(空気漏れがないかの確認)、帰還モジュールのハッチのリークチェックを行うことになっています。
ここでいうハッチというのは、居住モジュールと帰還モジュールの間にあるハッチを指します。

ソユーズ宇宙船は最終的に帰還モジュール(カプセル)の部分だけが地上に帰ってきますので、他のモジュールは途中で切り離されて大気圏突入で燃え尽きることになっています。
その切り離しに備えて、このハッチの気密性をアンドッキング前に確認しておこうというわけです。

やり方はいたってシンプルです。
帰還モジュールから遠隔操作で居住モジュールにあるバルブを開き、居住モジュール内の空気を一部宇宙空間へ放出します。
そうすることによって、帰還モジュールと居住モジュールの間に圧力差が生じます。
その状態で少し時間をおいて、その圧力差にほとんど変化がなければ、ハッチは十分に気密性が保たれていると言えます。

その、居住モジュール内のバルブを開いた時でした。
通常居住モジュールの圧力だけが低下していくところ、自分たちが今いる帰還モジュールの圧力まで低下を始めたのです。
一瞬、コマンダーのアナトーリも私も何が起こっているのか理解できず、とりあえず開いたバルブを閉じました。
そうするとどちらのモジュールの圧力低下も止まりました。

原因はごく単純なミスでした。
ハッチに付いている、ハッチの両側の圧力を均圧するために使用するバルブを閉め忘れていたのです。
ハッチの両側に圧力差があると、空気の力で押されてハッチが急に開いたり、もしくは開けられなかったりするので、ハッチを開閉する際にはそのバルブを開いて両側の圧力を均一にすることになっています。
そのバルブが開いたままになっていたということは、帰還モジュールと居住モジュールの間が筒抜けになっているわけで、居住モジュールの空気を抜けば当然、帰還モジュールの圧力も下がっていきます。

アナトーリと私の間に、「いきなりやってしもうた」感が漂いました。

バルブが開いていることに気付けなかった原因の1つは、シミュレーターの構造にあります。
シミュレーター内に座る時、いちいちハッチを開けて上から降りるのでは手間がかかりますし危ないので、壁を大きくくりぬいてクルーはそこから入ることになっています。
ですので訓練を開始する際、アナトーリも私もこのハッチには手を触れていないのです。
従って、ハッチが閉じている=そのバルブも当然閉じているもの、という先入観があったのです。

もちろんこのバルブは、インストラクターが訓練前に意図的に開けておいたのでしょう。
それにまんまとはまってしまったわけですが、これだけ大事なバルブですから、やはり1度は自分の目で見て、状態を確認しておくべきでした。

私が良かったなと思うのは、こういうミスを訓練中にしておいたことです。 人間ミスしたことほどよく覚えているものですし、アナトーリも私も同じミスは今後しないでしょう。
それからもう1つ。
2人とも気持ちの切り替えが早かったことです。
序盤で大きなミスを犯しましたが、そのあと立て直して、結果的には安全に地上に帰還できたのでその点は良かったなと思います。

自分への戒めの意味もこめて、マニアックなことをだらだらと書いてしまいました。
ここまで読んで下さった方、どうもありがとうございます。

明日、ヒューストンへ帰ります(^^)/

試験官陣の厳しい追及に思わずタジタジ(出展:JAXA)


 
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