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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2015年2月 6日

(出典:JAXA)
(出展:JAXA)

今日はじめてクルー3人でのソユーズのシミュレーション訓練がありました。

やっぱり全員で臨む訓練は良いですね。
いつもはコマンダーとレフトシーターの2人だけですが、これにライトシーターが加わると現実味が格段に上がります。
しかもソコル宇宙服着用ということで、実際のフライトにかなり近い条件で訓練ができました。

今日のシナリオは打ち上げ2時間半前の、クルーが発射台で宇宙船に乗り込むところから始まりました。
と言ってもそのままやると時間がもったいないので、やるべき操作を全て済ませた後は時間を打ち上げ直前まで早送りするのですが。

まずレフトシーターとライトシーターが座席に座ります。
シートベルトやヘッドセット、メディカルデータの転送ケーブルなどの接続を済ませたところで、中央の席にコマンダーが乗り込みます。
カプセル内は狭く、3人同時には準備がしづらいのでこのようになっています。

全員が乗り込んだ後、宇宙船のシステムの状態の確認、大事なシステムの作動点検などを行っていきます。
例えば地上との通信装置のメインシステムとバックアップシステムの点検などです。

大事な点検の1つに、ソコル宇宙服のリークチェックがあります。
これは宇宙服の気密性をチェックする為です。
所定の気密性が維持できていなければ、肝心な時に使用することができませんからね。
これは手袋を装着し、ヘルメットを閉めた状態で、宇宙服に酸素を送り込んで行います。
この間、宇宙服は風船が膨らむようにパンパンになります。
今日は適当な写真がありませんが、近いうちに膨らませる前と膨らませた状態を写真でご紹介したいと思います。
一見の価値有りです。

ソユーズロケットの打ち上げから軌道投入、ロケットからの切り離しまでは約9分弱ですが、この間は実は私たちはほとんど操作することがありません。
この部分はロケットが仕事をする部分で、私たちが乗り込んでいる宇宙船が仕事を開始するのは、ロケットから切り離されて自律飛行を始める時からです。

その代わり、切り離されてからはかなり忙しく、最初のメインエンジン噴射が目前に迫っているので、コマンダーはそれに向けた準備、私はシステムの状態の点検を行っていきます。

ここで本日最初の不具合を発見。
外部冷却システムのユニットが本来あるべき状態になっておらず、船内の熱がきちんと排出されていません。
これは以前油井さんから、チェックしておくといいですよとアドバイスを頂いていたので、さすがに逃しませんでした。
地上に報告して、トラブルシュートの許可をもらって定められた手順で機能を回復します。

そのあともメインスラスターの使用中に燃料の圧力上昇があったり、計算されたタイミングでスラスターがシャットダウンしなかったり、それでも何とかISSへのランデブーフェーズに向けてフライトを続けていたのですが、しまいには軌道モジュールの船内圧力が低下を始めたところをコマンダーがいち早く発見して、これ以上のフライトの継続ができない状況になってしまいました。

軌道モジュールというのは、私たちが普段座っているカプセルに繋がっているモジュールで、居住モジュールと呼ばれることもあります。
ISSとのドッキング機構を備えており、ドッキング後はこのモジュールを通ってISSへと移動できます。

そのモジュールの船内圧力が低下してしまっては、ISSに移動することができなくなってしまいます。
幸い軌道モジュールとカプセルの間のハッチは閉じられているので、カプセル自体の気密性は保たれており、クルーに差し迫った危険が生じているわけではありません。

次の地上との通信機会を待って状況を報告し、ISSとのドッキングを諦め、地球に帰還することを決定しました。
以前にも書きましたが、地上に帰還するための軌道離脱噴射のタイミングは限られていて、直近のそのタイミングまでの20分で慌しく帰還準備を進めていきます。
一旦手袋を外してしまっていたので、宇宙服のリークチェックも再度やり直す必要があります。

前述の燃料の圧力上昇は状況が改善したわけではないので、軌道離脱噴射中も注意深く圧力を監視し、圧力が大きくなりすぎないようバルブを開けたり閉めたり。
そうこうして無事に軌道離脱噴射を終えたところで、今日の訓練は時間切れに。

盛り沢山でとても有意義な訓練でした。



 
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