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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2015年2月23日

冬期サバイバル この木がなかなか倒れません!(出典:JAXA)

その1

2月3日

冬期サバイバル訓練、第二日目。

この日のタスクは、簡易シェルターからより大きくて本格的なシェルターへの組み替えです。 まずは設置場所を決めなければなりません。

簡易シェルターを設置した場所から少し離れた場所に、広々と開けたキャンプに適した場所があるのですが、1つ問題がありました。
1本の大きな木が傾いた状態で、隣に立っている木に寄りかかっているのです。
きっと強風で傾いてしまったのでしょう、根元の幹のところも少し折れかかっています。
問題は、もしこの木がそのまま倒れてきたら、ちょうどそのキャンプ場所をヒットしそうな位置に立っていることでした。

このままでは、この場所をキャンプには使えません。

「この木を切り倒してしまえば、焚き火の材料にもなるし広々としたキャンプ地も確保できるな」

とアナトーリが言いました。
一石二鳥というやつですね。
ケイトと私も賛同して、この日の作業はこの木を切り倒すことから始まりました。

ところが。

この木がしぶといの何の。
マチェーテで根元の部分を削りつつ、揺らしてみたりロープで引っ張ってみたりしたのですが、隣の木とうまく枝が絡み合った状態で寄りかかっているらしく、なかなか倒れてくれません。
時間が刻々と過ぎていくなか、もう少し根元を削っては押してみる、というのを何度も繰り返したのですが、ついには根元を完全に削ってしまっても倒せません。
まさに童話の「大きなかぶ」状態で、猫の手も借りたいというのはこういう状況を言うのでしょう。

9時から開始した作業が、10時を回り、やがて11時が近付いてくるにつれ、私の中では

(このままこの作業に固執し続けて、もし結果的にこの木を倒せなかったら、今日中にシェルターを設置できなくなってしまう・・・)

(一旦みんなで決めて始めたことを、何の成果も出ないまま止めてしまうのは人間の心理的にとても難しいな)

(止めるのは難しい。けど、どこかで止めないと)

(アナトーリがその判断を下さなければ、自分が言うしかない)

という思考がぐるぐる回っていました。
あとの作業のことを考えるとデッドラインは11時かな、と思っていたところ、11時を過ぎてまもなくアナトーリが、

「OK。ここまでにしよう」

と、何でもないことのようにあっさり言いました。
彼もきっと私と同じことを考えていたのでしょう。

結果的に、2時間という貴重な時間、その間に費やした労力は文字通り徒労に終わり、私たちは焚き火の材料を得ることもできず、新たなキャンプ地を探さなければならなくなりました。
あのまま、あと10分頑張っていれば私たちは木を切り倒すことに成功したかもしれません。
それは誰にもわかりません。
ただ、あの時点では100%の確信はありませんでした。
だからこそ、自分たちがあの場で下した判断は多分正しかったのだろうと思います。

案の定、というべきか。
その後の作業は時間との戦いで、インストラクターチームの間でも「果たして今日中にシェルターは完成するのか」と心配する向きもあったそうです(^^;)
ほぼ休みなく3人で作業して、地面の雪を取り払い、シェルターの骨組みを立ち上げ、パラシュートの生地で周りを覆い、床には断熱用の葉を敷き詰め、シェルターの中で火を焚いてもしっかりと空気が循環するように換気口に気を配り、日が暮れる頃にちょうどシェルターが出来上がりました。

夜には救援機がやって来たというので、信号用の焚き火に点火するよう無線で指示があり、ケイトがあらかじめ組み上げてくれていた焚き火を盛大に燃やしました。
あいにく「悪天候のため、救援機は現場に到着できず」ということで、翌朝の救援を待つことに。

シェルターが豪華になったので、その夜は前日と比べるとずっと快適です。 時間は短いですが、5時間くらいぐっすりと眠れました。


(写真は全てガガーリン宇宙飛行士訓練センターの撮影)


冬期サバイバル 救援機への信号用焚き火(出展:JAXA)
冬期サバイバル シェルター骨組みの設置(出展:JAXA)

冬期サバイバル 奮闘中のアナトーリ飛行士(出展:JAXA)
冬期サバイバル シェルター骨組みの設置(出展:JAXA)
冬期サバイバル パラシュートからシェルター用カバーの切り出し(出展:JAXA)
冬期サバイバル シェルターにカバーを取り付け(出展:JAXA)

冬期サバイバル 救援機への信号用焚き火(出展:JAXA)

その2

2月4日

冬期サバイバル訓練、最終日。

この日のタスクは、救援機とのランデブー地点まで移動するだけです。
移動といっても長い距離を移動すること自体が目的ではなく、それに向けた準備をしっかりと行うことが訓練の目的ですので、数百メートル移動するだけです。

ただ、その途中で3人のクルーのうち1人が怪我するという想定になっています。
これは訓練目的で、そうなることがもう事前にわかっています。
問題は、誰が、どこを怪我するかです。
足を怪我して歩けなくなってしまった場合、ストレッチャーを組んで他の2人で運んでやる必要があります。

昨晩のうちからアナトーリがこう言っていました。

アナトーリ「きっと自分が足を怪我するだろう。大体そのチームで一番重いメンバーが怪我をするからな」

ケイト&私「マジで??それ、きついんだけど」

ところが蓋を開けてみると、怪我をしたのはケイトで、しかも腕を骨折したというものでした。 アナトーリの予想、大外れ(笑)

自分で歩ける分、足の骨折よりはるかにマシです。
枝で腕に添え木をして、包帯で固定してあげて処置完了です。
あとはランデブー地点まで移動して、そこで発煙筒を焚いて救援機に合図を送ったところで、無事に訓練終了!!

温かいシャワーで3日分の埃と煤を落として、メディカルチェック(訓練前と比べて2kgだけ体重が落ちていました)、デブリーフィングを受けて、3日間に渡る冬期サバイバル訓練は終了したのでした。


(写真は全てガガーリン宇宙飛行士訓練センターの撮影)


冬期サバイバル 最終日出発前の準備(出展:JAXA)
冬期サバイバル 負傷者の手当て(訓練)(出展:JAXA)

冬期サバイバル 救援機とのランデブーポイントへの移動(出展:JAXA)
冬期サバイバル 救援機へ知らせる発煙筒(出展:JAXA)


 
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