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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2015年4月 2日

(出典:JAXA)

午前中に今回のロシア訓練最後のソユーズシミュレーションがありました。
最後ということで、ソコル宇宙服を着用です。

今回のテーマはずばり、火災です。
普通、訓練前にどんな不具合が起こるかは知らされないのですが、今回はクルー3人でソコルを着て臨む貴重な機会なので、インストラクターが「火災をやろう」と事前から話していたのです。

ソユーズ宇宙船内で火災が発生した場合の基本的な対処は、

①不必要な電気機器を全てオフにする
②船内の空気の循環を止める

ISSでの火災対処でもお話しましたが、無重力の宇宙空間ではこれで酸素の供給が止まり、大抵鎮火すると考えられています。
それでも鎮火しなかった場合、ISSでは消火器を使用しますがソユーズには消火器は搭載されていません。
そこで次のステップとして、

③船内を真空にする

という奥の手を使用します。
自ら船内の空気を抜いてしまうという、何とも大胆な消火方法です。
物が燃えるには酸素が必要ですから、確実に火災は鎮火するでしょう。

シミュレーションが始まる前に、3人で少し火災発生時の対応手順について打合せをしたのですが、その際にアナトーリが私に、

「煙が本当にひどい時はすぐ目の前すら見えなくなる可能性があるから、船内を真空にするためのボタンは、手探りでも押せるようにイメージしておいてくれ」

と言いました。
私の頭の中には、そういった重要なボタンを手探りで押すというアイディアは微塵もありませんでしたので、これには驚きました。
ソユーズで重要なコマンドを送るボタンは、全てレフトシーターの前にカバー付きで並んでいるのですが、船内を真空にするためにはこのうちの3つのボタンを押さなければならず、そのうちの2つはカバーだけでなく、カバーを開けるためにネジを外してやる必要があります。

慌てて、どのボタンがどこにあって、手探りでそのボタンを見つけるには、何を手がかりにしなければいけないかを、資料集で確認しました。
頭の中で、それらのボタンを押すイメージを何度か反芻してみました。

・・・よし、行ける。

いざ始まったシミュレーション。
今日のシナリオは、前回と同じくISSからアンドッキングして地上に帰還する部分です。
その瞬間は、アンドッキングを終えて、軌道離脱噴射の準備に取り掛かろうとしていた、そのときにやってきました。

目の前のパネルのいずこかから煙が噴き出しました。
本当にすごい勢いです!さすがロシア!
煙はあっという間に視界を覆い、私たちはあらかじめ話し合っていた通り、ヘルメットを閉めてソコルに酸素を送り込むバルブを開き、船内の換気装置を全てオフに。
これは本当に目の前のボタンも見えないな、という勢いで広がった煙は徐々に拡散と共に薄れていき、幸い操作に支障が出るまでには至りませんでした。
(後からケイトに聞いたところでは、煙の出所は彼女の近くだったらしく、本当に手探りでスイッチを操作したそうです)

そのあとは落ち着いて船内を真空にする手順を実施し、無事に(と言っていいのかわかりませんが)消火に成功し、そのまま緊急帰還の手順に従って地上に還ってくることができました。

デブリーフィングでも、よく対応できていたというインストラクターからのコメントでしたが、まあ火災が発生するのが事前にわかっていましたからね、今回は。

「次からは、予告なく火災起こすから(・∀・)」

さすがインストラクター、よくわかってらっしゃる(^^;)



 
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