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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2015年2月27日

(出典:JAXA)

その1

ISSの緊急事態への対処訓練、最終日はISSからの空気漏れへの対処です。
業界用語では「急減圧(きゅうげんあつ)」と呼びますので、今後こちらの呼び方を使いたいと思いますが、要するに船内の空気が何らかの原因によって宇宙空間に漏れてしまい、船内の圧力が低下している状態を指します。

原因としては色々考えられます。
極端な話、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の衝突によってISSの外壁に穴が開いたとか、ありそうな話ではハッチのシール部分が劣化して気密性を維持できなくなったとか、などが挙げられます。
幸い、これまでISSでこのような事態が実際に発生したことはありません。

急減圧への対応手順は以下の通りです。

①安全な場所への避難
②猶予時間の計算
③ソユーズのリークチェック
④問題のあるモジュールの特定と隔離
⑤問題の修復

①安全な場所への避難
これは昨日の火災の場合と同様です。
まずは何よりもクルーの安全が最優先ですので、自分たちのソユーズがドッキングしているモジュールまで避難します。

②猶予時間の計算
携帯可能な気圧計を使用して、現在の気圧、気圧が下がっていくペースを計ります。
その値を元に、船内の気圧が危険なレベルに低下するまでに残された時間を計算します。
この時間が10分を切っていれば、④以降には進めません。

③ソユーズのリークチェック
自分たちのソユーズがそもそものリーク(漏れ)の原因ではたまりませんので、ソユーズの気密性が保たれているかをチェックします。
やり方については④で後述します。
万が一、ソユーズ自体に問題があった場合、残念ながらそのソユーズは帰還に使用できなくなります。
ソユーズのハッチをISS側から閉めることになります。

④問題のあるモジュールの特定と隔離
圧力が危険なレベルに低下するまでまだいくらかの時間的余裕がある、そしてソユーズの気密性が確保されている場合、被害を最小限に食い止めるためにクルーと地上が連係して問題の解決に当たることになります。
つまり、リークの発生しているモジュールを特定し、そのモジュールを隔離することです。

モジュールの特定の仕方は、わりと原始的です。
モジュール間のハッチを閉めて、気圧計で気圧の変化を観察します。
もし気圧が下がり続ければ、リークは今閉めたハッチよりも「こちら側」、逆に気圧の下降が止まれば、リークははっちの「向こう側」ということになります。
最初はISSを大体3つにわけるような位置にあるハッチを閉めて、リークがその3つのエリアのどこにあるかを判断し、その後は1つ1つのモジュール毎にハッチを閉めて、これをリークしているモジュールを特定するまで繰り返していきます。

ここで1つ注意しなければならないのは、自分たちとソユーズの間にあるハッチを閉めない、ということです。
ハッチの両側の圧力差が大きくなると、空気の力でハッチが押されて、下手をするとハッチを開けられなくなるからです。
なので、ハッチを閉める時は常に自分たちはソユーズのある側にいなければなりません。
写真は今日の訓練からではありませんが、モジュール間のハッチを閉じたところです。

⑤問題の修復
問題のあるモジュールを隔離できれば、ひとまず十分な安全性は確保できたと言えます。
その先は、モジュール内の具体的なリーク箇所を特定して、それを修復できるかどうかという話になってきますが、これは色々な情報を元に、地上のチームとクルーが総合的に判断することになります。
もちろん修復できればそれに越したことはありませんが、そのためにクルーを危険にさらすわけにはいきません。
難しい判断になるでしょうね。

3日連続で、かなりディープな話になってしまいましたね(^^;)
最初の緊急事態への対処訓練ということで、訓練の模様をご紹介するというよりは、解説ばかりになってしまいましたが、次回からはもっと具体的なシナリオについてお話したいと思います。


その2

今日の午後には、ISSで使用されているアマチュア無線についての紹介がありました。

現在ISSには4台のアマチュア無線機があり、世界中の学校の子供たちとの交信イベントに使用されるだけでなく、ライセンスを持っている宇宙飛行士が自由時間に使えるようになっています。

ISSは地球の周りを90分で1周しているので、地上の1地点からISSと交信できる時間はわずか10分だそうです。
それもISSはいつも同じところの上空を通過するわけではないので、日本の愛好家の方々がISSと交信ができるチャンスはそうそう多くはないようですね。

私も将来自分のミッションの時に利用したいと思ってライセンスを取ったのですが、もうかれこれ3年半以上前のことになります。
色々な決まりごととかすっかり忘れてしまいましたし、ライセンス自体どこにしまったか忘れてしまったので、まずはそれを探さなければなりません(汗)

日本の子供たちとの交信イベントはもちろんやってみたいですし、チャンスがあれば一般の愛好家の方々とも交信したいなと思ってます。



 
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