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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2015年10月20日

(出展:JAXA)
(出展:JAXA)

今日は英語・ロシア語の語学訓練、ISSにあるロボットアーム操作練習用のシミュレーターの使用方法に関する訓練がありました。
それらからは特に書くべきこともありませんでしたので、金曜に受けた船外活動関連の訓練についてご紹介したいと思います。

この訓練は、Partial-gravity Offload System (POGO)、通称ポゴと呼ばれる訓練装置を使用します。
このPOGOは、手っ取り早く言ってしまえば、クレーンのようなもので人間を釣り上げ、人工的に無重力状態に近い状態を作り出すことが出来ます。
特に優れているのは、物理の世界で言う「慣性」をある程度模擬できる点です。

「慣性」というのは、外から力が加えられない限り、物体がその時の運動状態を維持するという法則です。
例えば、重力も何も存在しない空間でボールを投げると、そのボールはそのスピードで、方向を変えることなく、永遠に飛び続けます。
実際には地球上には重力が存在するので、ボールは重力に引かれて地上に落ちてしまい、そこで止まってしまうわけですが。
また、テーブルの上でコインを弾くと、少し滑って止まってしまうのは、コインとテーブルの間に摩擦力が生じるためで、もしその摩擦力がなければ、コインはテーブルの上をいつまでも滑り続けることになります。
先の例では重力によって、次の例では摩擦力によって、物体は運動状態を維持することが出来ませんでした。
摩擦力も結局は重力によって発生する力なので、どちらの例も重力によって、と言えるでしょう。
その重力がない宇宙空間では、物体の運動を主に支配するのはこの「慣性」の法則と「作用・反作用」の法則になります。

例えば、宇宙空間で手で物を押すと、その物は押された方向にどこまでも飛んでいき、押した私たちの身体も反作用の法則で反対方向に飛んでいきます。
また、身体をどこにも固定しないで、ねじ回しでねじを回すと、身体はその反対方向に回ろうとします。
これも反作用です。

宇宙空間で効率的に仕事をするためには、この宇宙独特の物体の動き、身体への反作用をしっかりと理解しておく必要があります。
そうしないと、身体を上手くコントロール出来なかったりするからです。

このPOGOという装置で釣り下げられていると、物を押せば同じ力で押し返されて体が動こうとしますし、動き出した身体は何らかの方法で止めない限りはずっとその方向へ動き続けます。
身体に加わった力を検知して、あたかも重力がないかのような動きを人工的に作り出してくれるというわけです。

今回の訓練では、このPOGOで釣り下げられた状態で、ISSの外部冷却システムの配管を外したり繋げたりする作業を練習しました。
これらの配管の中には高圧のアンモニアやガスが流れているので、非常にパイプが硬くなっており、ただでさえ難しい作業なのですが、これをPOGOでやるとさらに難しさが増します。
力を加えるたびに、自分の身体が反作用を受けるので、しっかりと身体を固定して作業しなければなりません。
宇宙での作業の感覚をつかむ、貴重な機会を与えてくれるのがこのPOGOというシステムなのです。



 
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