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2015年8月 4日
昨日予告したとおり、今朝一番で8Gのセントリフュージ訓練がありました。
はい、これを書いているということは、少なくとも無事ですw
順を追って書いていきましょう。
特に事前に注意事項はなかったので、朝食は普段通りしっかりと食べました。
睡眠もしっかり取れたので、体調は良好です。
金曜日と同様、最初に医師の先生からプロファイルについての説明と、課題の説明があり、例によってベッドに寝かされた状態で先生に胸部を圧迫され、腹式呼吸についてのおさらいがありました。
今日のプロファイルは以下の2つです。
①4Gラン
0.1G/秒で40秒かけて4Gへ。
60秒間4Gを維持したあと、0.1G/秒で減速。
②8Gラン
0.1G/秒で40秒かけて4Gへ。
4Gからは0.2G/秒で20秒かけて8Gへ。
30秒間8Gを維持したあと、0.1G/秒で減速。
また金曜と異なる点として、Max Gに到達した際に簡単な課題が与えられます。
課題は2つで、まず1つ目は視野の検査。
目の前に並んだランプのどれかが光ったら、右手に握ったボタンを押します。
2つ目は視力の検査。
1番から10番まで、「C」の形の記号が表示されていて、判読できるもののうち一番小さいものを減速終了後に口頭で回答します。
1番が最も小さく、番号が大きくなるにつれて、「C」が大きくなります。
私は視力だけは昔から良いのですが、1番が見えたら多分視力1.0くらいだと思います。
先生によると、Gが高くなると眼球の形も変わって、視野や視力に変化が出ることもあるそうです。
①4Gラン
まずは小手調べ。
金曜の時点で4.5Gまで体験しているので、まあこれは問題ないでしょうと思っていたら、0.1G/秒という加速が思っていたよりも速くて少し焦りました。
40秒とは思えないくらい、あっというまに4Gに到達したイメージです。
とは言え、4G自体はそんなに大したことないので、呼吸が乱れることもなく、2つの課題を難なくこなしました。
視力の検査も、1番の「C」がはっきりと見えました。
5分間の休憩を挟んで、いよいよ8Gのランへ。
加速が途中から0.2G/秒に上がるので大丈夫だろうかと、内心不安に思いつつ、先生からの「準備はいい?」の問いかけに躊躇せず「ダー(ロシア語のイエス)」と答えます。
②8Gラン
4Gまでは前回と同じです。
そこから加速が倍になって、一気に8Gを目指します。
6Gくらいから、体がはっきりと背中の方向に押さえ込まれる感覚です。
内臓が体の後ろの方に移動しているような、足の血液が後ろの方へ偏ったような感覚に襲われます。
胸郭にしっかりと力を入れないと、押さえこまれて息が出来なくなりそうです。
7Gくらいで目の表面に溜まった水が涙になって後ろに流れていきます。
顔の肉が後ろに引っ張られます。
ちょうど、両の手のひらを左右の頬に当てて、後ろに引っ張ったときのような状態です。
『これはさぞかしモニターでは変な顔になっているに違いない』などど考えたのも束の間、はっきりと呼吸が難しくなってきました。
胸郭に力を入れ、お腹に意識を集中して膨らませたり凹ませたりして、空気を肺に送り込みます。
深くは息を吸い込めません。
その分、呼吸の回数を増やして調節しました。
それやこれやの変化が20秒の間に起こって、あっという間に8Gへ到達。
人間の体というのは不思議なもので、自分の体重の8倍もの重さがかかっているにも関わらず、ちっともそんな気はしません。
呼吸にさえ気をつけていれば、重さに耐えることは容易だと感じました。
逆に、意識しないと呼吸が難しいです。
2つの課題も、どちらも問題なくこなしました。
視力は4Gランの時よりも少し低下したような感覚がありましたが、それが眼球の圧迫によるものなのか、知覚能力が低下しているのか、よくわかりません。
ただ、1番の「C」がちゃんと見えたので、それほど大きく視力が低下したわけでもなさそうです。
30秒間の滞在もあっという間に終わって、あとは0.1G/秒でゆっくりと減速。
無事に8Gランが終了しました。
終わってみての感想ですが、「健康な一般人なら十分に耐えられるレベル」だと思いました。
別にニュータイプである必要はありません。
なんと言っても、Gのかかる方向が胸から背中へ抜ける方向というのが大きいと思います。
先ほど書いた通り、胸に力を入れてお腹で呼吸をすることさえ気をつけていれば良いからです。
これが油井さんの乗られていたF-15のようなジェット機になると、頭から足の方向へGがかかるわけですから、その厳しさは雲泥の差でしょう。
ブラックアウトや失神するというのも頷けます。
油井さんが「こんなものか」と思われたのも、無理はないような気がしました。
最後に一言。
セントリフュージ訓練、楽しかったです!
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