このページは、過去に公開された情報のアーカイブページです。

<免責事項> リンク切れや古い情報が含まれている可能性があります。また、現在のWebブラウザーでは⼀部が機能しない可能性があります。
最新情報については、https://humans-in-space.jaxa.jp/ のページをご覧ください。

サイトマップ

宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センター宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センタートップページ
  • Menu01
  • Menu02
  • Menu03
  • Menu04
  • Menu05
  • Menu06
  • Menu07

JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2015年8月 3日

カプセルを外からみたところ。セントリフュージの回転が速くなるにつれ、カプセルも傾いていき、平べったくなっていきます。(出典:JAXA)

金曜日はセントリフュージ訓練がありました。
これは遠心機で宇宙飛行士の乗ったカプセルをグルグル回して、遠心力をかけることによって高加速度Gを模擬するものです。

以前、同じ機器を使用したソユーズカプセルの手動降下操縦の訓練もありましたので、そちらもご覧ください。
大西宇宙飛行士Google+日記(2015年2月7日)
今回の訓練の目的は、打ち上げから軌道投入までと、大気圏突入時にかかるGを経験することです(Gプロファイル)。
ですので、操縦は一切行いません。
私はカプセル内に座って、自分の体にかかるGを経験して、その際の呼吸法を学ぶのが目的です。

まず最初に、心電図を測る電極を体に取り付けられたあと、医師の先生から今回使用するGプロファイルについて説明を受けました。
どのタイミングでどれくらいのGがかかるかを、グラフを見せられながら説明してくれます。
今回の訓練では、最大で4.5Gまでかかるとのこと。
次に、そのような状況での呼吸のコツについて教えてもらいます。
ベッドに横になるよう言われ、先生が私の胸元に手を置いて、ベッドに押さえつけてきます。

先生「4.5Gっていうのは、要するにあなたの体重の4.5倍の重さがこうやって体にかかってくるの。
その時に大事なのは、胸の部分はしっかりと力を入れて踏ん張ること。
はい、踏ん張って!

そう。
呼吸はお腹で!
お腹を意識して膨らませたり凹ませたりして呼吸をしないと、息がしづらいからね。
胸は踏ん張る、お腹で呼吸する。
これを忘れないこと!」

事前のブリーフィングが終わり、セントリフュージ(遠心機)へ移動します。
だだっ広い部屋に、中心からセントリフュージの腕が生えていて、その先端に私の乗るカプセルがくっついています。

カプセルの中の座席に腰掛けると、スタッフがシートベルトや枕、血圧と脈拍を測るバンド、血中酸素をモニターするセンサーを装着させてくれます。

腕にはボタンを握らされ、カプセルの扉が閉まっている間はこれを押しているよう指示がありました。
きっと気絶してボタンから指が離れたら、自動でセントリフュージが停止するようになっているのでしょう。
その他、視線は目の前のカメラをずっと見ているよう言われます。
この映像も、常時コントロールルームで医師によってモニターされます。

さあ、準備が整った段階で1本目のランのスタートです。
まずは打ち上げから軌道投入までのGプロファイルです。
実際のソユーズロケットの打ち上げがモデルなので、時間もしっかりと9分弱かかります。
ソユーズは3段式のロケットなので、Gのピークが3回やってきます。
まず最初は第1段ロケットが燃焼し、燃料の消費やフェアリングの切り離しによって機体が軽くなるにつれてGが上昇していきます。
4G程度でピークになった頃、第1段切り離し。
ここでGが一旦ゼロ近くに。
第2段、第3段についても同様です。

実際にやってみた感想は、4Gくらいならまだまだ楽勝です。
2Gくらいから少し呼吸がしづらくなるので、教わった通りに腹式呼吸を心掛ければ、息苦しいということはありません。
面白いのは、頰の肉が後ろに垂れるのがわかるくらい、また目の表面の水分が涙になって後ろに流れていくなど、Gが上がっていくと様々な変化が生じるので、それが興味深かったです。
あと、ロケット切り離しの際に一気にGが減るのは、少し気持ち悪いです。
ゆっくりとしたGの上昇とは違い、一瞬でGが減るので、ここは三半規管がおかしくなって目がグルグル回る感覚があります。
と言っても、そういう感覚はすぐに去りますが。

先生「これくらいなら、まだまだ大丈夫そうね。それじゃあ、5分休憩して次のプロファイルにいくわね」

ということで一旦休憩。
私のメディカルデータは逐一モニターされているので、私の体の状態は向こうへ筒抜けなのでしょう。

休憩後、2本目のランのスタートです。
大気圏突入の際のGプロファイルです。

秒速8km近いスピードで大気圏に突入するカプセルは、大気の層によって徐々に減速され、その間宇宙飛行士の体にはGがかかってきます。
最初は大気も薄いのでGも小さいですが、降下していくにつれて大気が厚くなり、減速の効果も上がっていくことからそれに応じて体にかかるGも大きくなります。
今回のプロファイルでは、約5分間のランのちょうど中間付近で約4.5Gの最大Gがかかります。

これが今回の訓練で一番大きいGになるのですが、一気にそれだけのGがかかるわけではなく、徐々にGが上がっていくのと、4.5Gかかるのは本当にわずかの時間なので、2本目のランも問題なく終了しました。
カプセルが停止したあと、担当者がシートベルトやメディカルデータ取得用のセンサーを取り外してくれて、訓練終了です。
少しの間、歩くと目が回る感覚がありましたが、それもすぐに治まりました。

こうして、第1回目のセントリフュージ訓練が無事に終わりました。
しかし、これはほんの序章に過ぎないのです。
明日月曜の朝イチで、第2回目のセントリフュージ訓練が行われます。
最大Gはなんと8Gが予定されています。
航空自衛隊出身の油井さん的には、「こんなものか」という訓練だったようですが、私は一般人代表として臨んで来たいと思います!
レポートどうぞお楽しみに。


カプセルの中ではこんな感じで座っています。右手に握っているのが、緊急停止用のボタンがあります(出展:JAXA)
事前に医師の先生から入念なブリーフィングとメディカルチェックがあります(出展:JAXA)


 
Copyright 2007 Japan Aerospace Exploration Agency SNS運用方針 | サイトポリシー・利用規約