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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2015年6月 6日

SAFER訓練
成功例(出典:JAXA)

今日は来週からのESA訓練(European Space Agency: 欧州宇宙機関)に備えるための移動準備日でしたので、訓練は英語のクラス以外ありませんでした。

ですので、月曜に書き残したことを書きたいと思います。

月曜の午後にSAFER訓練というものがありました。
SAFER(セイファー)というのは、船外活動用の宇宙服に装備されている小型のスラスター装置のことです。

船外活動中は、宇宙飛行士は命綱でISSと繋がっているので、万が一手すりから手を放してしまっても、その命綱がある限りISSに戻ってこれるようになっています。

ですが、もしもその命綱が切れてしまったり、何らかの理由できちんとセットされていなかったりすると、その宇宙飛行士はそのまま宇宙空間に放り出されてしまいます。
そのような場合には、宇宙飛行士はこのSAFERと呼ばれる小型の推進装置を使って、自分でISSまで戻らなければなりません。

・・・と、こう書くと怖がらせてしまうかもしれませんが、そこにいたる可能性は相当に低いのでどうかご安心下さい。
本当に万が一の備えのための装置です。

SAFERを使用することによって、宇宙飛行士は姿勢をコントロールして、かつ3次元空間で前後左右上下に動けるわけですが、もちろんそのためには推進力を使用します。
推進力は窒素ガスを噴射することによって得られるのですが、はっきり言ってその窒素ガスの量は限られています。

SF映画で観られるような、宇宙飛行士が自由自在に宇宙空間を飛びまわるというのは、現実的ではありません。
実際には、目標を定めて出来るだけ数少ない噴射でそこに到達するようにしないと、あっという間に窒素ガスが底をついてしまいます。

SAFER訓練では、バーチャルリアリティ装置を使用して訓練を行います。
ヘッドセットを装着すると、目の前にはISSの3Dグラフィックが広がります。

まず、自分の体がISSから放り出されるところから始まり、そこから30秒間待ちます。
この30秒は、SAFER装置を取り出すために必要な時間と見なされています。
30秒経ったらSAFERを起動します。
その次にすることは、ISSを見つけることです。
ISSを見つけたら、そちらの方向へ自分の体を向け、姿勢をキープします。
あとはISSへ向かってSAFERを使用してコントロールしていきます。

難しいのは、窒素ガスはなるべく節約するようにコントロールしなければならないのですが、あまりのんびりしていると軌道力学の影響を受けやすくなってきます。
軌道力学の話はかなり高度になるのでここでは説明を避けますが(と言って逃げるっ)、簡単にいうと、単にISSへ向かってまっすぐ飛んでいけるわけではないということです。
時間と共に、進路が逸れていきます。

添付した2枚の画像は、実際の私の訓練からのものですが、飛行経路を示したものです。
黄色の線が実際の飛行経路、紫の線が予想進路です。
わかりやすいように、成功例を1枚と失敗例を1枚選んであります。

1枚目は成功例で、真下に放り出された後、比較的まっすぐISSへ戻れているのが黄色の線でお分かりいただけると思います。

2枚目の失敗例では、上方へ放り出された後ISSへ戻ろうとしているのですが、左の方へ流されていって、最終的にはISSを通り過ぎてしまっています。
こうなると、もうISSへは戻れません。
再トライするだけの窒素ガスはありません。
紫の予想進路が曲線になっていますが、これは軌道力学の影響によるものです。
この影響をうまく頭の中でイメージできていないと、失敗する可能性が高くなってしまいます。

今回の訓練では、このあたりの事前のイメージトレーニングがちょっと足りてなかったなあというのが反省点です。
まだあと2回訓練を受ける機会があるので、それまでに復習しておこうと思います。

冒頭で書きましたが、明日はドイツのケルンへ移動します。
ケルン郊外にある欧州宇宙機関の宇宙飛行士訓練センターで、「コロンバス」モジュールに関するシステム訓練と実験装置の訓練に来週参加してきます。

それでは、皆さんどうぞ良い週末を♪


SAFER訓練
失敗例(出展:JAXA)


 
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