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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2015年10月22日

今日は大きな訓練が2つありました。
1つは、ISSの電力ロスへの対処訓練です。
この訓練はジェフとケイトとチームを組んで受けました。

ISSを構成する機器は全て、電力を供給されてはじめて正常に機能することが出来ます。
アメリカ区画のメインコンピューターしかり、熱制御システムのポンプしかり、果ては冷凍庫や運動機器に至るまで、電力なしではISSの運用は成り立ちません。

それだけ大事な電力ですから、何重にもバックアップがめぐらされていて、1つの電力機器の故障がISSシステム全体に影響を及ぼすことのないよう、設計されています。

ISSの電力源は大きく4系統に分かれていて、さらに1つの系統が2つのチャンネルに分かれているので、4×2の合計8チャンネルあります。
そのうちの1つ、もしくは2つがダウンするケースを想定した訓練を、私たち宇宙飛行士は何度も受けるのですが、今日がそのまとめのようなシミュレーション訓練になります。

8チャンネルと書きましたが、そのどれもが均等に重要かというとそうではなく、特に重要なチャンネルは3つです。
訓練は基本的に最悪の状況が起こるので、今日の訓練もその3つのうちの2つがダウンしました。

ISS内で何か異常が発生した場合、それらはシステムによって自動で検知され、メインコンピューターによってメッセージが発出されて、クルーや地上の管制チームに異常が知らされます。
それらのメッセージは色々な種類がありますが、例えば

「○○の機器と通信が取れない」
「××系統の熱制御ループの温度が通常よりも上昇している」
「△△ラック内で火災を検知」

などのようなメッセージが発出されます。
電力システムに異常が発生した場合の大きな特徴の1つとして、これらのメッセージが複数同時に発出されるというのが挙げられます。
というのは、その電力源からパワーをもらっている機器が全てシャットダウンするので、それらの機器に関するメッセージが大量に発生するからです。
この場合重要なのは、故障したのは大本の電力機器であって、下流の機器は故障したわけではなく、電力を失って停止しただけ、ということです。

従って、複数のメッセージが同時に発出された場合、まず私たちが疑ってかかるのは、電力機器の故障です。

どの電力機器が故障したかをまず最初に見極めて、そこから失われた1つ1つの機能を回復していくというのが基本的な流れです。
回復するやり方としては、バックアップのある機器に関してはバックアップへの切り替え、他の機器で機能を代替できるものに関してはそちらへの切り替え、などがあります。
ISSはさすがに良く設計されていて、重要な機能はほとんど何らかの方法で復旧できるようになっています。

もう1つ、電力システムに異常が発生した場合の特徴として、地上との通信がダウンする可能性が高いということです。
それはつまり地上からISSのシステムへコマンドを送信することも出来なくなるので、その通信を回復するところまではクルーが自分たちで対処しなければならないということです。
現在のISSの運用はほとんど地上からのコントロールで行われています。
私たちクルーが自らシステムを制御することはほとんどありません。
でもこのようなケースでは、否応なしにクルーが対処しなければ、地上からはコマンドも送信できないというわけです。
なので、この電力ロスのケースは何度も繰り返し訓練を受けることになっているのです。

今日は2つのケースをシミュレーションしたのですが、2つ目のケースはジェフの指名で私がリードを取って事態に対処することに。
通信機能がダウンしないパターンの電力ロスでしたので、地上との通信は維持されたままでした。

ところが。

地上「ステーション、こちらヒューストン」

と地上から呼びかけてきたので、早速私がマイクを手に取って応答します。

私「ヒューストン、こちらステーション、どうぞ」

・・・・・・

私「ヒューストン、こちらステーション、どうぞ??」

・・・・・・・・・

どうやら向こうからの呼びかけは聞こえているのに、こちらからの応答は聞こえていないようです。
2つの主回線両方で呼びかけてみても地上からの応答がないので、

(このモジュールの通信パネルが正常に作動してない可能性があるな・・・、他のモジュールの通信パネルから呼びかけてみるか)

ということで、ケイトに頼んで他のモジュールからヒューストンを呼んでもらいました。
すると、ヒューストンからすぐに応答が返ってきました。

(予想的中だな。この通信パネルに何らかの不具合が発生しているに違いない。きっと電力ロスと関係があるんだろう。くわばらくわばら)←ちょっといい気になってる

今後の対処は通信の確保されている他のモジュールで実施することにして、そのあとは問題なくケースクローズまで行きました。

そのあとのデブリーフィングにて。

私「最初にいたモジュールからはヒューストンと交信出来なかったけど、あれは電力ロスと関係あるんだよね?」

インストラクター「ああ、あれね。マイクのプラグを引っこ抜いといた!プラグをちゃんと差し込めば、普通に話せたはずだよ」

私「ガ―(´・ω・|||)―ン!!」



 
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