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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2015年10月 7日

今日は大きな訓練はありませんでしたが、1時間くらいの訓練が終日組まれていて盛り沢山でした。
朝イチは精神心理学の先生との面談がありました。
打ち上げに向けての心構えや準備、ミッション中に留意しておくべきことなどについて、アドバイスを受けました。
まあコンサルティングというのでしょうか。
打ち上げまでに定期的に、このような面談が組まれます。

先生のお話の中で興味深かったのは、宇宙に行って、そこでの仕事のやり方や生活に慣れるまで数週間(もちろん個人差が大きく、飛行経験のある飛行士の方が短い傾向がある)はかかるだろうということです。
私も何人かの飛行士から、最初は自分の脳みそがしっかりと働いていないような気がする、といったような話を聞いたことがあります。

その先生が言うには、それは状況認識力自体が低下するわけではなく、宇宙という新しい環境の中で、地上で無意識にやっているものの考え方が通用しなくなることによるところが大きいということでした。

例えば。
コーヒーカップを何かの拍子にどこかに置いたきり、どこに置いたか忘れてしまうことってないでしょうか?
そういう場合、その時と同じ状況に自分を置いて周囲を見渡すことによって、見つけられたりしませんか?
これは、私たちが生きているのは3次元空間なわけですが、コーヒーカップを置ける場所というのは重力の影響で限られてくるために比較的容易に見つけることが出来ると言えます。
もちろん逆さに置いたらコーヒーがこぼれてしまいますし、不安定な場所に置くわけにもいきません。
無意識のうちにそういった「適当でない場所」を排除して、的を絞って探すから見つけられるのです。

ところが、宇宙空間ではこの重力がありません。
そうすると、上下左右前後、360度どこにでもコーヒーカップを置けるようになるわけです。
(もちろん、カップではなく特殊な容器が必要になりますが)
一旦どこに置いたか忘れてしまうと、それを探すのは容易ではありません。
自分の周囲のありとあらゆる場所を探さなくてはならないからです。

そういった宇宙環境の特殊性を体と頭が理解して、それに応じた行動が出来るようになるまで、数週間という時間が必要だそうです。
その間、「自分の頭がちゃんと働いていないような」感覚に襲われるのかもしれませんね。

もう1つ。
ISSのシステムに関する訓練が1時間あったのですが、これは最近の変更点やホットな話題についてインストラクターから教わる時間です。
今日のトピックは、システムをコントロールするための端末のソフトウエアアップデートに関するものでした。
この端末は、色々なシステム機器の状態をモニターしたり、バルブを開けたり閉めたり、装置に電力を供給したり遮断したり、といった様々なコマンドを送ることが可能なのですが、私たちの身の回りのPCやタブレット、スマートフォンの基本OSソフトが適宜アップデートされていくのと同じように、この端末のソフトウエアも日々改良が加えられ、進化し続けています。

例えば、冷却システムのアンモニアがどこかから漏れている、といった事態が発生した場合、これまではいくつものウィンドウを開いて、それらのウィンドウを行ったり来たりしながら状態のモニターとコマンドの送信を行って、漏れている箇所を特定していたのですが、今度新しいフォーマットのウィンドウが導入され、必要な情報が全てそのウィンドウ1つでコントロール出来るようになります。
そうすることで、誤ったコマンドを送ったり、別のバルブを閉めてしまったり、データの読み違えをするような可能性を大きく減らすことが出来ます。

こういった改良は、いざ見せられると「どうして今まで誰もこういうウィンドウを作ろうとしなかったのだろう」と思ってしまいますが、コロンバスの卵と同じで最初に考えつく人はやはりすごいなあと、感心してしまいました。



 
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