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2015年10月23日
今日は一風変わった、けれども非常に大事な訓練がありましたのでそれについて。
2年前の2013年7月に行われたISSの23回目のアメリカの船外活動で、船外活動中のルカ・パルミターノ飛行士のヘルメット内に水が漏れだす事例がありました。
幸い大事には至りませんでしたが、その後同様の事例の再発を防止するため、様々な対策が講じられました。
水が漏れだした原因を追究して、考えられる要因を1つ1つ潰していくのももちろんなのですが、万が一同様の事態が再発した場合でも危険を最小限にするための工夫がなされました。
その工夫とは2つあって、1つはスノーケルを宇宙服内に取り付けること。
スノーケルというのは、海水浴で使われるものと同様です。
口にくわえて呼吸が出来るチューブですね。
これを口元の部分に取り付けます。
チューブの先は、自分のお腹のあたりまで届いていて、ヘルメット内に水が浸入してきてもスノーケルを使うことによって呼吸が可能というわけです。
そしてもう1つが、Helmet Absorption Pad(通称HAP:ハップ)です。
直訳するとヘルメット吸収パッドという意味ですが、早い話が水を吸収するパッドをヘルメット内の後頭部の辺りに取り付けるというアイディアです。
私たち宇宙飛行士は船外活動中はオムツを使用しますが、それと同じ吸収素材が用いられていて、500ml以上の水分を吸収する優れものです。
これらのスノーケルとHAPは、あくまで事態が再発した場合に安全にエアロックまで帰還するための対策で、決してそのまま船外活動を継続するためのものではありません。
従って、このHAPが水で濡れ始めたな、という感覚を知っておく必要があります。
今日の訓練は、その感覚を体験するためのものでした。
まずは実際にこのHAPを取り付けた状態のヘルメットを装着して、通常の状態がどのようなものか、というのを把握します。
そのあと、一旦ヘルメットを取り外して、HAPに水を50mlずつしみこませてヘルメットを装着してというのを繰り返し、段階的な感触の変化を体験します。
100mlくらいまでは、湿っているなという感覚よりは、何か冷たいものが頭の後ろにあるな、という感覚です。
250mlまでしみこませると、これはもうはっきりと頭の後ろが湿っているのがわかります。
頭を後ろに押し付けると、水がHAPから滲み出してくる感覚があります。
そこから一気にHAPが吸収できる限界近い600mlまで増やしました。
こうなると、もう頭を普通の位置に置いておくことが出来ないくらい、HAPも厚くなっています。
一部の水分が漏れだして、首元を濡らしました。
地上では重力があるので、水が下に滴り落ちてきますが、宇宙空間では表面張力でHAPや後頭部に張り付くことになるのだろうと思います。
船外活動中は、定期的にHAPの状態をチェックすることになっています。
そこで今回得た感覚を元に、早めに水の漏れを感知できれば、速やかに、かつ安全にエアロックへ帰還することが出来るでしょう。
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