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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2015年8月12日

今日はお昼から6時間のロングシミュレーション訓練がありました。
実際のフライトでは、打ち上げからドッキングまで約6時間ですので、ほぼそれに近い時間の訓練になります。

先々週の投稿で、4周回ランデヴーと34周回ランデヴーについて書き、ちょっとした不具合で4周回ランデヴーの実現は不可能になると書きました。
大西宇宙飛行士Google+日記(2015年7月31日)
今日はもともと4周回ランデヴーの予定で始まり、途中で34周回への変更を余儀なくされましたので、その部分を中心に書きたいと思います。
自分の反省の意味も込めて。

打ち上げ前準備から軌道投入までは、特に大きな問題はありませんでした。
軌道投入直後に熱制御システムの不具合が発生しましたが、決められた手順通りに対処して、4周回ランデヴーはそのまま継続。
1回目、2回目のメインエンジン噴射も予定通り。

2回目のメインエンジン噴射のあたりで、酸素タンクからのリーク発生。
船内の酸素濃度がゆっくりと上昇していきます。
酸素を船内に供給する大元のバルブを閉めるとリークが止まったので、リーク箇所はそのバルブより下流ということになります。
そのまま、そのバルブを開け閉めすることによって酸素濃度をコントロールすることにして4周回ランデヴー継続。

私がその処置を実施している間、アナトーリが手動操縦装置のテストを行っています。
途中からそちらに合流して、予定より少し遅れてそのテストを完了しました。
そのあと、次のメインエンジン点火に向けて、姿勢を確立しなければならないのですが、その途中で地球センサーが1系統故障。
地球センサーは宇宙船のお腹を地球方向へ向ける為のもので、ソユーズの姿勢制御の要とも言うべきセンサーです。
自動的にもう1つの系統に切り替わり、また最初から姿勢の確立が始まりました。

ここで、3回目のメインエンジン噴射の時間が迫っていたことから、手動での姿勢確立を実施することをアナトーリが判断しました。
地球センサーの自動シーケンスに任せていると、エンジン噴射までに姿勢を確立できなくなるかもしれないからです。
コマンダーの足元に設置されている潜望鏡(のようなもの)を使用して、手動で姿勢を確立するやり方は、日の当たっている間しかできませんが、自動シーケンスよりずっと速いです。

手動モードをオンにして、手動で姿勢を確立。
この時点で、3回目の噴射までもう2分を切っていました。
と、その直後に正しい姿勢が確立されたことを示す表示が消えました。
アナトーリも私も、「?????」です。

たったいま、姿勢を確立したばかりなのに、なぜ表示が消えたのか、わかりません。
2人で頭を悩ませますが、どうしても理由がわからないまま、刻々と噴射のタイミングが近付いてきます。
まずい・・・、このまま時間までに表示が戻らなければ、エンジンを噴射できない・・・・イコール、4周回ランデヴーが不可能になってしまう!!!

慌てる私たちを尻目に無情にも時計は進んで、ついに噴射の時間に。
当然、姿勢が確立できていないので、エンジンも噴射されません。
この瞬間、34周回モードへのダウンモード確定です。
4周回でドッキングする為には、本当にピンポイントのタイミングでソユーズを打ち上げる必要があるので、途中で予定されている噴射が実施できなければ即、ダウンモードになります。

それにしても、原因がわかりません。
手順書に沿って、しっかりと操作を実施したつもりです。
ところが、システムの状態をもう1度チェックしようと、操作パネルで確認をはじめたところ、なんと、まだ手動操縦モードがオンになっているではありませんか!!
先ほど姿勢を確立させたあと、オフにするのを忘れていたのです。

私たちは姿勢を確立した時点で満足していたので、そのあとも自動でその姿勢が維持されていくものだと思い込んでしまっていました。
実際、手動モードさえオフにしていれば、そうなっていたのです。
ところが、手動モードはオンのままなので、システムも私たちクルーもどちらも姿勢をコントロールしていない状態になってしまっていたのです。

元々のきっかけは地球センサーの故障だったのですが、それでも自分たちのミスで4周回ランデヴーが不可能になってしまったのは、後味の悪いことこの上ありません。
今回のミスを犯した原因を、私なりに分析してみましたが、いくつか挙げられます。
エンジン噴射まで時間のない中での操作だったこと。
姿勢確立したタイミングで他の操作が重なり、姿勢のその後のずれに気付くのが遅れたこと、などなど。
いずれにしても、私たちが手動モードが解除されていないことに気付いていれば、防げた事態なのは間違いありません。
これが実際のフライトだったら・・・と思うと、背筋が寒くなります。
と同時に、訓練のときに失敗しておいて良かった、とも思います。

大事なのは失敗から学ぶこと。
同じ失敗を繰り返さないこと。

私がパイロット時代に学んだことの1つです。

アナトーリも私も、自分たちの犯したミスは自分たちが一番良くわかっています。
今回の経験が、きっとこの先、生きてくるでしょう。


軌道投入後、船内の機密性が保たれているのを確認した後、ヘルメットを開けることができます(出展:JAXA)
なかなか珍しいアングルw
居住モジュール内から帰還モジュールを見るとこんな感じです(出展:JAXA)


 
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