このページは、過去に公開された情報のアーカイブページです。

<免責事項> リンク切れや古い情報が含まれている可能性があります。また、現在のWebブラウザーでは⼀部が機能しない可能性があります。
最新情報については、https://humans-in-space.jaxa.jp/ のページをご覧ください。

サイトマップ

宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センター宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センタートップページ
  • Menu01
  • Menu02
  • Menu03
  • Menu04
  • Menu05
  • Menu06
  • Menu07

JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2015年6月25日

今日の午後はISSの緊急事態対処訓練がありました。
メンバーは、アナトーリ、ケイト、私の第48/49次長期滞在クルーのほか、ゲスト出演の3名を加えた計6名です。
ゲスト出演といっても、うち2人は宇宙飛行士、残りの1人もISSとの交信役であるCAPCOM(キャプコム)の経験豊富なエンジニアの方なので、対応手順などはもちろん理解している人たちばかりです。
彼らをいかに有効に活用するかが、私たちプライムクルーの腕の見せ所です。

以前にもご紹介しましたが、ISSで想定されている緊急事態は以下の3つです。
①火災
②急減圧(船内の空気が抜けていくこと)
③有害物質(特にアンモニア)の発生

私たちクルーには、どんなシナリオが待ち受けているかもちろんわかりません。
インストラクターから、各自好きなモジュールで待機するよう指示があり、それぞれ思い思いの方向へ散っていくところから訓練スタートです。


シナリオ その1

とりあえず、日常生活を想定して私は個室のあるNode 2(ノードツー)と呼ばれるモジュールで待機。
すぐにケイトも合流して来ました。
アナトーリはロシア側区画に向かった模様。
これもまあ、ISSの日常的な1日を想定すれば当然です。
ゲストの3人は固まって、アメリカ区画とロシア区画の境界にあるNode 1(ノードワン)でたむろしているのが、Node 2からも見えます。

と、私とケイトのいるNode 2のすぐ隣、LAB(ラブ)モジュールで勢い良く煙が噴き出しました!(本当に煙が焚かれます)
最初のシナリオは火災のようです。
まずは何より、自分たちの乗るソユーズのある側への避難が最優先ですので、LABの向こう側へ移動しなければなりません。
煙の中を移動するために、酸素マスクの着用が必須になります。
このあたりは手順書をみるまでもなく、各メンバーが手順を記憶しているべきところですので、私もケイトもNode 2に配備されている酸素マスクを着用して、煙の充満しているLABを通り抜けてNode 1へ。
煙がこちら側へそれ以上入ってこないように、LABとNode 1の間のハッチを私が閉めました。
ゲスト出演3名は既にロシア区画へ向かった模様なので、私たちもその後を追います。
コマンダー役のアナトーリのいる、ロシア区画のサービスモジュールで、クルー6名全員集合しました。

火災発生時の大原則は、自分とソユーズの間に火元を置かないことです。
これは他の緊急事態にも言えることです。
いざというときに、ソユーズで地上へ帰還できるよう、必ずソユーズへの避難経路を確保した上で、対処します。

空気の成分を分析する携帯型の機械を用いて、サービスモジュール内の空気を分析したところ、呼吸に安全なレベルが保たれているのが確認できたので、ここで酸素マスクを脱ぎます。

このあとは手順書に従って、火元の特定、消火活動にうつるわけですが、ここで6名のクルーがそれぞれの役割にわかれます。
私たちは事前に話し合っていた通り、ケイトがPC端末を用いて火元の特定にあたり、アナトーリと私が消火活動、ゲストの3名が諸々のサポートにあたります。

火元の特定には、ISSの各システムの状態を把握することが必要です。
作動している煙探知機はないか、急に故障した装置はないか、など。
今回のケースでは、煙の発生しているLAB内の電源装置の1つが異常を示していたので、そこが最も疑わしい「容疑者」ということになります。

火元の特定にはある程度の時間が必要ですので、消火チームはその間にどんどん火元に接近していきます。
モジュールを移動するたびに先ほどの空気分析器を使用して、酸素マスクの着用が必要かどうかを判断していきます。
LABのすぐ隣のNode 1まで戻ってきて、そこを前哨基地にします。
ゲストクルーの助けも借りて、消火器、予備酸素マスクなどを準備します。

そうこうしているうちに、頼りになるケイトから、火元と疑わしき装置の入っているラックの位置情報が入ってきました。
閉められたハッチの窓越しにLAB内を確認すると、依然として煙が充満していますが向こう側が見えないほどではありません。
アナトーリと共に、ハッチを開ける判断を下しました。
酸素マスクをあらためて着用し、ハッチを開けてLABの中へ。
まずはLAB内の空気をサンプリングしたあと、ケイトから教えられたラックへ直行し、そのラック内の空気をサンプリングします。
ラック内の一酸化炭素濃度が、LAB内の値よりも10%以上高かったので、火元として断定です。

ラック内の全ての電気機器をケイトが遠隔操作でオフにして、それでもラック内の一酸化炭素濃度が上昇を続けていたので、あらかじめ準備しておいた消火器で、ラック内に二酸化炭素を噴射します。
これで大抵のラック内火災は鎮火できるはずです。

消火器を使用した後は、そのモジュールからは一旦避難する決まりになっているので、LABからNode 1に戻り、間のハッチを閉めたところで1本目のシナリオ終了です。

こうやって書いてみると、いかにも私たちがテキパキと動いて事態を解決したように読めるでしょうが、実際はちょこちょこと細かい時間ロスなどもあり、30分以上はかかっていると思います。
久しぶりの緊急事態対処訓練、しかもクルー6名編成での初めての訓練とあって、私たち3人とも少し動きが固かったですね。
もう少し、ゲストクルーの3名を有効に活用できていれば、よりスムーズに短時間で消火まで実施できたような気がします。
そのへんはこの先の訓練の課題ですね。



 
Copyright 2007 Japan Aerospace Exploration Agency SNS運用方針 | サイトポリシー・利用規約