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2015年2月 7日
今日のセントリフュージ訓練から。
忙しかった1週間の終わりには、やはりスペシャルな訓練が待っていました。
ガガーリン宇宙飛行士訓練センターには2機のセントリフュージ(遠心機)があります。
遠心機というのは物を高速で回転させたときに生じる遠心力を利用して、混合物から特定の物質を分離したりする用途に用いられるようですが、ここにあるセントリフュージの場合、回されるのは人間です(笑)
1月20日頃の投稿で書きました、ソユーズ帰還時の手動操縦訓練を今日の午前中、このセントリフュージの中で実施しました。
あのテレビゲームをやっているような訓練です。
忘れてしまった方は今すぐ過去の投稿をチェックです。
回転する半径がそれぞれ7mと18mという2機のセントリフュージがあるのですが、そのうち大きい方が現在メンテナンス中だとかで、今日使用されたのは7mの小さいほうです。
通常ソユーズが帰還する際に大気圏に突入する時は、最大で4.5GくらいのG(重力加速度)がかかります。
これは大気によってカプセルが減速するためにかかるGです。
ただ地上で計算された軌道と、実際に帰還してくる軌道にズレがあったような場合、所定の着陸地点に帰ってくるためには、時にそれ以上のGがかかることもあります。
今日は私にとって初めてのセントリフュージでしたので、最大4Gまででやろうとインストラクターが優しく提案してくれました。
そうなのです、私の担当インストラクターはとても穏やかで優しい方なのです。
心電図や脈拍、呼吸などをモニターするメディカルセンサーを体につけて、いざセントリフュージに乗り込みます。
スタッフが私の体をベルトで固定しているのを待っている間、だんだんと自分が緊張してくるのがわかりました。
心臓の鼓動が速くなったように感じます。
無理もありません。
私はごく普通の民間人から宇宙飛行士に選ばれたので、自分がこんな小さな箱に入れられて遠心分離機にかけられるなど、一体いつ想像できたでしょう。
インストラクターとの交信では務めて平静を装っていましたが、私のメディカルデータはコントロールルームで逐一モニターされているので、内心の緊張はバレバレだったはずです。
1本目の回転が始まりました。
最初はゆっくりと1Gまで加速していきます。
その間もシミュレーター画面に映し出されたソユーズカプセルの大気圏突入の軌跡とデータを元に、手元のコントローラーで必要な操作を行っていきます。
Gが高くなってくる前に、しっかりと今後の操作をイメージしておこうと必死に頭を働かせます。
2Gに近付くあたりから、加速のペースが上がってきました。 Gは自分の操作と連動しているので、全て自分がコントロールしていることなのですが。
3Gくらいで少し停滞した後、後半の空気の層が厚くなってくる箇所にさしかかると、Gがまた一気に上がり始めます。
通常最大のGを記録するのはこのあたりです。
結局今回は最大3.78Gを記録して、無事に規定の誤差の範囲内で地上の着陸地点に下ろすことができました。
1本目が終わってみると、緊張が大分解けました。
実際、3.78Gくらいではほとんど頭の思考能力と手元の操作には影響しませんでした。
体は確かに座席に押し付けられるのですが、胸から背中にかかる方向なので、血の気が引くようなこともありませんし。
むしろ普段画面とにらめっこしているだけの訓練より、ずっとリアルで楽しいです。
2本目はもうすっかり落ち着いて、これまた問題なく着陸地点に降りられました。
今度は最大で4Gまでかかりました。
すると―
インストラクター 「よーし、それじゃ次は最大6Gまで開放して大気圏突入誤差が大きいモードいってみよう」
私 「へ? (( ;゚Д゚))」
ちょっ、え??
一番最初のブリーフィングで「今日は4Gまで」って・・・。え?
鮮やかに前言を撤回したインストラクターが何事もなかったかのように、
「準備はいいか?」
と聞いてきます。
「・・・・・・・・・・ダー(ロシア語のYes)」
こうなったら、自分の操縦テクニックで何とかするしかありません。
Gが一気に上がりすぎないように、なるべく満遍なく高いGを維持するように、慎重に、慎重に。
結局、残りの3本目と4本目のランではそれぞれ最大4.29Gと4.52Gを記録しました。
今週はいつも以上に充実した、密度の濃い1週間だったように思います。
今週末は星の街でゆっくりしようと思います。
とは言っても、来週には試験が1つ控えているのでそれに向けた勉強をしなければいけませんし、日曜日には油井さんが同じコテージに合流してこられるので、それまでに少しコテージを片付けておかなければいけません。
週末も充実した時間になりそうです。
それでは、皆さんどうぞ良い週末を♪
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