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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2015年12月 2日

ガガーリン宇宙飛行士訓練センター撮影。プライムクルーと一緒に。(出展:JAXA)

その1

昨日のフィットチェックの模様をガガーリン宇宙飛行士訓練センターが動画で紹介しています。




その2

12月1日 L-14 days

今日はソユーズ宇宙船の1回目のフィットチェックがありました。
これはロケットに組み込まれる前の宇宙船に搭乗して、内装・装備品を確認するためのもので、ここで何らかの不具合が見つかったら11日に行われる2回目のフィットチェックまでに修正されることになります。
また、プライムクルーが「ここに時計を付けるためのベルクロテープを貼ってほしい」といったリクエストをする機会でもあり、打ち上げ当日と同じようにソコル宇宙服を着用するところから船内に乗り込むまでのリハーサルという位置づけもあります。
要するに、打ち上げに向けた、最重要のマイルストーンの1つと言えるでしょう。

宇宙基地の敷地内に入ってから、さらにバスで揺られること30分。
荒涼とした大地の中に忽然と現れる大きな建物。
お世辞にも綺麗とは言えない、かなり年代物の建物です。
ただ、ロシアの建築物は外見が古びていても、中は綺麗にリフォームしてあることがほとんどで、この建物も例外でなく、中に入ってみると古さは全く感じさせません。

この建物は、打ち上げ当日に宇宙飛行士がソコル宇宙服を着用する場所でもあります。
ホテルを出発したクルーは、ここで宇宙服を着て、家族とガラス越しに面会したあと、発射台へ向かうことになります。
また、ソユーズやプログレスの最終艤装の工場にもなっています。

まずはプライムクルーが、ブルースーツで宇宙船の下見をしている間、私たちバックアップクルーは宇宙船に搭載される予定の物品を見せてもらいました。
宇宙食や飲み物を始め、様々なISSへの補給品が重量・スペースの許される限り搭載されることになります。
ソユーズというと人間を宇宙に運ぶことに特化された宇宙船というイメージがありますが、こうやってみると意外に多くの物が載るなあと思いました。
と言っても、1つのテーブルに全部載りきってしまうくらいの量ですが。

その中から、衛星電話とレーザー測距機を実際に屋外で使用させてもらいました。
衛星電話は少し前にこちらでご紹介したので、覚えてらっしゃる方も多いかと思います。
レーザー測距機は、ISSとの手動ランデヴー訓練で私がいつも使っているやつです。
ISSとの距離と相対速度を測ることができます。
ただ、訓練で用いるのはあくまでシミュレーターですので、ちゃんと照準が合っていなくても距離が測れてしまうので、実機を使用するのは今回が初めてになります。

遠くの建物や近くに停まっている車に照準を合わせて、距離を測ってみます。
思っていたより簡単でしたが、これをISSまで数kmのところから狙うのはそれなりに難しそうです。
そのあたりの距離では、ISSはかなり小さいでしょうから。

プライムクルーの下見が終わると、今度は私たちがブルースーツで宇宙船のフィットチェックです。
宇宙船は縦に直立された状態で組み立てられていますので、一番上に乗っている居住モジュールから中に入ります。
その中の装備品を一通り確認した後、一人ずつ帰還モジュール(カプセル)に降ります。
この降りるのは容易ではありません。
ただでさえ狭いカプセル内ですから、一人ずつ降りては一旦ハッチを半分閉めないと自分の席にも移動できません。
帰還モジュール内も一通り装備品やシステムの状態を確認しておしまいです。
プライムクルーが搭乗する機体なので、私たちは本当に「見る」だけです。
実際にバルブを操作したり、スイッチを押したりということは絶対にしません。

下見が終わると、その間にソコル宇宙服を着込んだプライムクルーと交替します。
彼らがさらに色々な点検を行っている間、私とケイトは同じく組み立てラインに入っている今月下旬に打ち上げられる予定の新型プログレス補給船MS型機を見せてもらうことが出来ました。
従来機はM-M型と呼ばれます。
外見はソユーズとほとんど違いがありません。
中は全然違っていて、居住モジュールはがらんどうで、中に貨物を詰められるようになっています。
帰還モジュールは燃料と水のタンクで占められているので、外部からはアクセスすら出来ません。
新型プログレス補給船MS型を2機打ち上げた後、新型ソユーズ宇宙船MS型が打ち上げられることになります。

さて、次は私たちもソコル宇宙服を着用します。
ズヴェズダ社によって作られた自分専用のソコルです。
訓練で着用しているものより、身体にピッタリ合うようになっているので、着用するのは結構大変です。
特に私は頭が大きいので、頭を通すところでいつも悪戦苦闘してしまいます。

再び、宇宙船の中へ。
今度はソコルを着込んでいるので、さらにカプセルへの移動の難易度が上がっています。
ハッチをくぐるときなどは、傷をつけないように必死でハッチを守りながらです。
あとで皆で笑いましたが、例えて言うなら「友人の高級外車の新車の運転席に座らせてもらう」感じです。
もしくは、渋滞で高級外車の後ろに付けてしまったときの緊張感に似ているかもしれません(笑)

何とか自分専用のシートに潜り込んでみて、改めてカプセルの狭さを実感します。
打ち上げの日は、乗り込んでから打ち上げまで約2時間半、打ち上げからISSとのドッキングまで約6時間です。
合計8時間以上を窮屈な姿勢で過ごすのは、それなりに、というかかなり大変な気がします。
そのあたりは、油井さんが帰ってきたら是非聞いてみたいですね。

フィットチェックを終えてホテルに帰ってくる頃には、もう日が暮れようとしていました。


ソユーズTMA-A型19号機の前で。(出展:JAXA)
ガガーリン宇宙飛行士訓練センター撮影(出展:JAXA)

荒涼とした景色に現れる巨大な建物。(出展:JAXA)
ガガーリン宇宙飛行士訓練センター撮影。ガラス越しにエネルギア社の幹部の方や関係者の方と話します。(出展:JAXA)

レーザー測距機の実機を使用してみる(出展:JAXA)
レーザー測距機の実機を使用してみる(出展:JAXA)

ソコル宇宙服でのフィットチェックを終えて、降りてくるプライムクルー(出展:JAXA)
ガガーリン宇宙飛行士訓練センター撮影(出展:JAXA)


 
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