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2015年9月 9日
木曜日にプールでの船外活動訓練があるので、今日の午前中はその事前ブリーフィングがありました。
今回はいつもと違って、ジェフ・ウィリアムズ飛行士と組んでの訓練になります。
ジェフは実際に船外活動も実施したこともある「超」がつくほどのベテラン飛行士なので、楽しみです。
また、訓練後にレポートしますね!
午後にはもう1つ、船外活動に関連する訓練がありました。
皆さんは「減圧症」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
スキューバダイビングをされる方は耳に馴染みのある言葉ではないかと思います。
これは、私たちの周りの圧力が急に低下することによって、血液の中に溶け込んでいた窒素などが血管の中で気泡になって、血液の流れを妨げることによって起こる症状を指します。
症状としては関節痛がメインで、症状がひどくなると重大な後遺症を残す可能性もあるので、注意が必要です。
宇宙飛行士が船外活動に出ていく場合、宇宙服の中は0.3気圧くらいの酸素で満たされています。
ISSの船内は通常1気圧なので、船外活動を実施するためには、宇宙服の中を1気圧から0.3気圧まで減圧してやる必要があります。
減圧にあたっては、先ほど説明したようなリスクが伴うので、ISSでは時間をかけて減圧したり、また色々な工夫を施して、少しでもこの減圧症のリスクを低減するような対策が取られています。
それでも、減圧症を発症するリスクを完全にゼロにすることは出来ないとされています。
「それなら、宇宙服の中も1気圧を維持すればいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、宇宙服の中の気圧がそれだけ高くなると、宇宙空間の真空に出たときに内外の気圧差がそれだけ大きくなるので、宇宙服はパンパンになってしまいますし、そもそもそれだけの気圧差に耐えられるような素材・強度で宇宙服を作るとなると、肝心の作業性・機動性が低下してしまうでしょう。
そういった色々な要素を考慮して、メリット・デメリットを天秤にかけた結果、上記の0.3気圧という数字に辿り着いているわけです。
前置きが長くなりました。
今日の訓練では、船外活動中にこの減圧症を発症した場合の処置について学びました。
減圧症の治療としては、高気圧酸素療法が一般的に用いられます。
これは患者を気圧を調節できるチャンバーに収容し、高気圧・高濃度の酸素環境下におくものです。
ISSでもこれと同じ治療を行うのですが、ここで問題になるのが、ISSでは酸素は非常に貴重な資源なので、例えばエアロックを高気圧・高濃度の酸素環境にしようとすると、その貴重な酸素を大量に必要とします。
そこで、宇宙服自体を一つのチャンバーと考え、患者である宇宙飛行士が宇宙服を着たままの状態で、宇宙服の中だけを加圧してやることで、この治療を行います。
前述の通り、宇宙服は通常外気圧よりも0.3気圧高い状態で使用することを前提に設計されていますので、例えばこれをさらに高い気圧で使用するためには、それなりのセットアップが必要になるので、今日はその手順を学びました。
また、それだけの高圧で使用された宇宙服は、以後、そのままでは船外活動に使用することは出来なくなります。
通常よりも厳しい条件で使用されたことにより、気密性に影響が出てしまう可能性があるので、実際にそのような事態になれば、相当な点検が必要になり、それをパスしなければ船外活動で使用することは出来なくなるだろう、とのことでした。
もちろん、そのような事態にならないことが一番大事ですが、万が一を想定し、今日のような訓練も私たち宇宙飛行士には非常に大切なことなのです。
私のGoogle+を読んで下さっている方々ならきっと油井さんのTwitterもフォローして下さっていると思いますが・・・
待望の新企画、『宙亀通信』がスタートしました!
いやー、私も今日までこんな企画が始まるのを知りませんでした(笑)
ポップな感じのオープニングが、ちょっと私の中の油井さんのイメージと乖離していて、何とも斬新な仕上がりです。
油井さんのことですから、きっと私たちがワクワクドキドキするようなネタを連発してくれるに違いありません!!!
乞うご期待です!
↑ ハードルを上げまくる人
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