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2015年5月19日
これまでで一番楽しかった訓練は? と聞かれたとき、間違いなく候補の1つに挙がってくるものが、ASCAN時代に実施された無重力体験訓練です。
ASCAN(アスキャン)というのは、Astronaut Candidate(宇宙飛行士候補者)の略で、NASAでは正式に宇宙飛行士に認定される前の訓練生をこう呼びます。
宇宙飛行士の訓練は、どれも目新しいものばかりで基本的に楽しいのですが、やはり訓練ですから、そこにはそれ相応の苦労も伴うわけです。
その苦労は、時に肉体的なものだったり、時に精神的なものだったりします。
しかしこの無重力体験訓練だけは、純粋な楽しさ以外何もなかったと言える、唯一の訓練でした。
訓練は写真の飛行機によって行われます。
無重力体験フライト、通称「Zero-G Flight」用に特別に改造されたNASAの機体です。
中は最後尾の座席のみ15席ほど残っていますが、それより前方は全て座席が取り外され、かわりにクッションパッドで床も壁も天井も覆われています。
どうやって無重力状態に近い状態を作り出すかは、いたってシンプルです。
飛行機を急上昇させて、そこから急降下に移るだけです。
ジェットコースターがお好きな方はイメージしやすいかと思いますが、あのスピードを出して傾斜を上り詰めたあとに下りに転じるあたりで、一瞬体がふわっと浮くような感じがありますよね?
それと同じ仕組みで上手く機体をコントロールしてやると、その急上昇から急降下に移るあたりで機内は20秒程度の微小重力になります。
その間、無重力状態とはどのようなものかを体験することができるというわけです。
1回のフライトで、それを何度も繰り返します。
私たちの時は20回弱だったように思います。
Zero-G Flightの重要な目的は、宇宙空間で使用される機器や実験装置などが、無重力状態でもちゃんと計画されたとおりに動作するかを確認することなのですが、NASAのASCAN訓練では将来の宇宙飛行に向けて、無重力状態とはどのようなものなのかを知っておくために、必ず1度クラス全員でこの飛行機に搭乗することになっています。
この時ばかりは、30代40代の大人たちも子供に帰ったように大はしゃぎです。
その20秒間は、クルクル空中で回ったり、壁から壁へ飛んだり、思うがままです。
酔ってしまうのでは?と思われるかも知れませんが、ちゃんと事前に酔い止めの薬を服用していたので、幸いその心配はありませんでした。
またインストラクターから、最初の2,3回は体を慣らすためにあえてじっとしているように、との指示があってそれを忠実に実践した効果もあったかもしれません。
言うならば、これは20秒間だけ続く魔法です。
時間が過ぎるとその魔法は12時の時計が鳴ったシンデレラのように解けてしまうので、15秒くらいから着地する態勢に入っておかないと、急に魔法が解けてドシン!となることもしばしば(笑)
そのためのクッションパッドというわけです(^^;)
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