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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2015年11月 4日

セントリフュージ内です(出展:JAXA)

金曜日の試験に向けたセントリフュージ訓練がありました。

セントリフュージ(遠心機)というのがどんなものなのか、想像つかない方もいらっしゃると思うので、以前の動画を再掲します。
アームをぐるぐる回して、その先のカプセルの中にいる人に重力加速度Gをかけようというものです。

特に自覚症状はなかったのですが、事前のメディカルチェックで脈拍が高めと言われました。
これまでの訓練通りやるだけと思ってはいたものの、深層心理では緊張していたのかも知れませんね。
金曜日の試験もセントリフュージを使って実施するので、今日より緊張することは間違いないと思います(^^;)

合計7本のランを実施し、1,3,5,7本目がそれぞれ実際にGをかけて行い、残りの3本はセントリフュージを止めた状態で行いました。

7本すべて、初期条件が異なります。
カプセルの重心位置の違いといった条件がありますが、中でも一番大きな違いは、大気圏突入誤差です。
これは、元々「この地点で大気圏に突入するはず」という計算されたポイントがあるのですが、そのポイントと「実際に大気圏に突入したポイント」との誤差を言います。

誤差が生じる要因は様々あり、例えばエンジンの出力の誤差であったり、大気分布の違いであったり、エンジン噴射中の姿勢の誤差などなど、多くの要因が考えられます。
そういった様々な要因によって、計画とズレた位置で大気圏に突入するわけですが、地上の目標地点に降りるためには、その誤差を降下中に修正してやる必要があります。

誤差の種類としては、計画よりも手前で突入するケースと、計画よりも奥側で突入するケースがあるのですが、手前で突入した場合は、普段よりもゆっくりと降りるようにカプセルの揚力を大きめにしてやれば良いので、必然的に体にかかるGも緩やかになります。
反対に、計画よりも奥側で突入した場合、そこから突っ込んで目標地点を目指す必要があるので、当然Gは大きめになります。

私のインストラクターは優しい方なので、1本目はこの計画よりも手前で突入するケースにしてくれました。
最初は緩やかなGで、身体を慣らしてやろうというわけです。
結果、1本目は最大3.32Gまでで済んだので、久しぶりのセントリフュージでしたが良いウォーミングアップになったと思います。
それでも、3Gくらいを超えてくるとお腹に力を入れないと息がしづらいのと、何よりしゃべりにくいですね。
操作中は、なるべく自分のやっていることや色々なデータを地上にレポートした方が良いのですが、口を開いて声を出すというのがとても億劫になります。

休憩も兼ねて、止まった状態で2本目を実施した後、3本目はいよいよ高Gがかかるランです。
大気圏突入時の誤差が奥側に250kmくらいズレた状態が初期条件なので、最初からどんどん高度を降ろしていかないと、目標の着陸地点より遥かに遠くに降りることになってしまいます。
もちろん、Gも高めになります。

昨日、評価項目の1つに最大の重力加速度があると書きましたが、通常は4G以下で抑えると減点にはなりません。
ただ、これくらい大きな誤差になってくると、4G以下というのを守っていると、とてもじゃないですが目標の地点には降ろせないので、今回の条件では許容される最大重力加速度が5Gになります。

操縦のコツとしては、急激にGを増やしていくと一気に5Gを突き抜けてしまうので、十分に余裕を持ってGが上がるペースを制御してやって、5Gに近付いたらその状態をなるべく長い時間キープすることです。
そうやって高度をどんどん降ろしていって、むしろ目標地点より手前に降りられるくらい突っ込みます。
そうすると今度は空気の層がかなり厚くなってきて、さらにGが上がろうとするので、そこでGが穏やかになるように揚力を増やせる余裕が出てくるわけです。

今回は結構強気に攻めていった結果、最初のピークが4.95Gと、かなり最大の5Gに近付いてしまいちょっと焦りましたが、その後は落ち着いてその高Gを終盤まで維持して、数km以内の誤差で着陸することが出来ました。

計7本、どれも満足のいくコントロールが出来たので、自信を持って金曜日の試験に臨みたいと思います。


インストラクターは別室でモニターしています(出展:JAXA)


 
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