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2015年9月30日
HTV5号機、無事に任務を完了して大気圏突入を終えました。
HTV本体だけではなく、その運用に携わった全ての方々、お疲れさまでした!
昨日のISSからの分離時には、シミュレーション訓練を彷彿とさせるような事態が生じたようですが、それに対しても油井さんを始めとするISSのクルー、つくばのHTV管制チーム、ヒューストンのミッションコントロールセンターが見事に連係をとって対処して、無事に今日の大気圏突入に繋げられたようですね。
素晴らしいと思います。
そのイベントについて少し解説しておきたいのですが、まずその前にHTVがISSから分離・離脱する流れを簡単にご紹介しておきましょう。
①地上からの遠隔操作で、ISSから切り離されたHTVをロボットアームで所定の位置に移動
②地上の管制チームが分離に支障がないことを確認後、クルーにアームからHTVのリリースを許可
③クルーがアームにHTVをリリースするコマンドを送信
④アームの先端がHTVをリリースしたのを確認後、クルーが手動でアームを後退させる
⑤アームを安全な距離まで後退させた後、HTVが自らISSからの離脱を開始
このうち、③と④の部分が実際に油井さんが担当した部分になります。
ここからは昨日のイベントについて、添付のライブ中継の録画を元に解説していきたいと思います。
ビデオ開始から16分後あたりに、①の手順が早送りで紹介されています。
17分30秒には、既にその所定のリリース位置に達して、待機している状態が映っています。
このあと、地上とISS間の交信が聞こえたり聞こえなかったりしてはっきりとしませんが、33分ごろには②の許可が、ヒューストンでCAPCOM(キャプコム)を担当された若田さんからISSへ伝えられたはずです。
33分30秒のところで、解説の方が「ウィンドウオープンまであと20秒」と言っています。
このウィンドウというのは、HTVをリリース出来る時間帯のことです。
HTVを狙ったエリアで大気圏に突入させるために、その時の日照条件や軌道の条件によって、HTVをリリースするべき時間が自ずと逆算で決まってくるので、それが可能な時間帯のことを指しています。
34分の段階では、既にそのウィンドウに入っていますので、クルーはこのあたりで③のコマンドをアームに送信しているはずです。
問題はこの時に起きました。
コマンドを受けて、ロボットアームの先端部分が掴んでいるHTVを離すわけですが、この時に何らかの問題が発生して、アームが動作を停止してしまいました。
原因はいま現在も調査中です。
離す動作が完了せず、ロボットアームはHTVを掴んだままです。
35分過ぎから、クルーと地上の間の交信が聞こえ始めます。
35分20秒頃、若田さんからクルーに、待機が指示されます。
35分55秒頃、チェル飛行士が油井さんに「キミヤ、今の交信聞こえたか?」と聞いたのに対して、油井さんが「ホットバックアップをアクティブにしたところ」と答えています。
以前、確かHTVのキャプチャーの時だったと思いますが、ロボットアームの重要なオペレーションの時にはメインとバックアップの2系統を立ち上げておいて、何か不具合が起きた場合にすぐにもう1系統にスイッチできるようにしておく、ということを書いたと思います。
この時に油井さんがまさにやっているのがそれで、バックアップ系統に切り替えたと言っているのです。
チェルと油井さんが交信を使って会話しているのは、チェルがメイン系統のあるキューポラというモジュール内に残り、油井さんがバックアップ系統のあるLAB(ラブ)と呼ばれるモジュールに移動したために、2人が離れ離れになったことを意味しています。
直接会話することが出来なくなったので、交信を使って会話しているわけです。
バックアップ系統をアクティブにして、とりあえずHTVが健全に保持されたままの状態であることが確認できたので、ひとまず応急処置としては完了です。
そこで、36分30秒には若田さんから、アクティブにしたバックアップ系統を元に戻すよう指示があり、油井さんがそれを実行して完了を報告しています。
この間、HTVは画面上静止しているので一般の方々には何が起こっているのか、把握が難しいところかと思いますが、上記のようなやり取りが地上とクルーの間で起こっていたわけです。
またここでは聞こえていませんが、地上の管制チーム内では、フライトディレクターとロボットアームシステムの担当管制官を中心として、多くの会話・情報が飛び交っていたはずです。
さながらシミュレーション訓練のような不具合でしたが、見事なチームワークでそれに対処していたのは、本当に見事だなあと思いました。
この後、結果としては当初予定していたHTVリリースウィンドウの間にはリリース出来ませんでしたが、次のウィンドウを待つ間に地上の管制チームによって、ロボットアームが今後の操作に問題がないことが確認され、地球を1周した90分後にあらためて、油井さんの手によってHTVはリリースされたのでした。
実際の④と⑤のあたりは、2時間6分40秒ぐらいのところからご覧頂けます。
早送りしながらで構いませんので、ぜひご覧になってみてください。
というわけで、少々マニアックな内容ではありましたが、実際のオペレーションの中で起きた不具合対応について、簡単に解説させて頂きました!
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