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2015年10月16日
船外活動の総合訓練の2日目も無事に終わりました。
写真は昨日のドライランの時のものですが、おおよその雰囲気はお分かり頂けるかと思います。
船外活動用の宇宙服を着て立っていますが、もちろん自力で立っているのは大変なので、天井から重さを軽減させるためのシステムによってサポートされています。
出社してまずお医者さんの診察を受けます。
真空状態に減圧したり、そこから加圧したりと体への負荷が大きい訓練なので、事前にしっかりと医師に診て頂いて、ゴーサインをもらわなければなりません。
これはプールの中で行う船外活動訓練も同じです。
そのあと、事前準備のところは昨日しっかりと練習したので、今日はすぐに宇宙服を着るところからスタートです。
今回使用しているのはClass 1(クラスワン)と呼ばれる、実際にフライトで使用できる宇宙服や装置なので、それらに傷を付けたり不純物が付着しないよう、時計から指輪までありとあらゆる私物は外さなければなりません。
その他、化粧やヘアーワックスの類もNGです。
正式な検査を経て、承認されたものしか身に着けることが許されません。
まずは着ているものを全部脱いで、オムツを着けます。
次にベースレイヤーと呼ばれる肌着を身に着けます。
これは薄いですが、よく汗を吸い取ってくれる素材でできています。
厚手の靴下を履いた後、冷却用下着を身に着けます。
これは体中にパイプが張り巡らされている特殊な下着で、このパイプの中を水が流れて、身体を冷やしてくれる大切な役割を担っています。
これだけ着こんでいると、とても暑いです。
宇宙服自体は腰の部分で2つに分かれるので、下半身を穿いた状態で、上半身部に下から潜り込みます。
なかなかのキツさで、特に私は頭が人一倍大きいので、首の部分に頭を通すときは本当に毎回大変な思いをします。
上半身が通ったら、色々なコネクターを接続しています。
先ほどご説明した、冷却用下着のパイプを水のラインに接続するのもこの時です。
次にグローブを着けて、最後にヘルメットを装着します。
装着していく作業が一通り終わったら、宇宙服の気密性をチェックします。
これは、酸素が漏れないかの確認です。
宇宙服への酸素の供給を一旦止めて、所定の時間内にどれだけ気圧が下がったかによって、気密性が十分保たれているかどうかをチェックします。
ここまでで、宇宙服自体の準備はほぼ終了です。
本当はもっと色々なステップを踏むのですが、ここでは重要なものだけご紹介しています。
でも、実はまだ私の身体の準備が出来ていません。
この後の減圧に入る前に、減圧症の危険性を減らすために、私の身体の血液中に溶け込んでいる窒素を出来るだけ追い出してやる必要があります。
減圧症というのは、血液の中に溶け込んでいる気体が、圧力の低下と共にそれ以上溶け込んでいられなくなって、泡となって血流を妨げることによって起こる様々な症状を言います。
船外活動中にそのような症状に見舞われてはとても作業どころではなくなるので、減圧前に100%濃度の酸素を一定時間呼吸することによって、血液中の窒素を追い出してやらなければなりません。
最近はこの方法も色々と改良されて、それに要する時間も短縮されていますが、今日の方法は何と4時間、宇宙服を着た状態でひたすら待つ、というものでした(;゚□゚)
前日の段階から、
「好きな映画とかのDVD持って来て良いよ。その4時間の間にそれを見せてあげるから」
と言われていたので、悩みに悩んだ挙句、やはりここはこれしかないでしょうと、「スターウォーズ」の旧三部作を持参しました。
「スターウォーズなんだけど、良いかな?」
とインストラクターに聞くと、
「NASAに努めてる連中の間では鉄板のチョイスだよ」
とお墨付きをもらえました(笑)
チャンバーの中で、宇宙服を着た状態でポツンと1人立ち尽くしながら、上映会スタートです。
真空になるチャンバー内にはモニターは設置できないので、壁についている窓の外にモニターがセットされていて、その窓越しに観ることになります。
モニターは恐らく10インチもないような小さな画面でしたが、それでも宇宙服を着て鑑賞する映画は格別です。
エピソードⅣを観終って、エピソードⅤに突入。
マスターヨーダが登場したあたりで、
「タク、もうそろそろ4時間が経つわ。減圧に向けた準備に取り掛かるわよ」
というテストディレクターの鶴の一声で、上映会は終わりを告げたのでした。
To be continued.....
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