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2015年5月30日
今日わたしは、
生まれて初めて、
人の血を抜きました(ー∀ー;)
採血は様々な宇宙医学実験のベースになる代表的な実験サンプルなので、多くの医学実験で実施されます。
もちろん、なるべくサンプルは複数の実験でデータを共有できるように配慮されますので、実験の数だけ採血を実施するというわけではありません。
当然、ISSでは自分たちで採血しなければなりません。
自分でやる人、他のクルーにやってもらう人、様々だそうです。
というわけで、今日はその練習がありました。
採血の基本的な流れは以下の通りです。
・針やチューブ、ガーゼ、消毒用ワイプ、手袋などの必要なものを準備して、片手でも取れるように並べておきます。このとき、無重力では固定しておく必要があるので、テープを裏返して貼って、そこに道具を貼り付けます。
・上腕を縛って、針を入れやすい血管を探します
・ターゲットを決めたらワイプで消毒
・心臓に向かう方向へ針を刺しいれます。このとき、周辺の皮膚を余っている指で引っ張ってやると針が入りやすいです
・針が血管に入ると、少し血が針から入ってくるので、それを確認してからチューブを差して採血します。この最初の少量の血をフラッシュと呼びます
・血は真空のチューブ内に勝手に入ってくるので、それが止まったらチューブを交換して必要な量を採血します
・上腕を縛っているバンドを緩めて、針を抜いて、止血します。
まずは採血のトレーニング用のパッドを使用して練習。
インストラクターの指示に従って、問題なくこれをこなしたあと、いよいよ生身の人間を相手に。
最初の犠牲者は自分です(笑)
片手しか使えないので、少しコツがいりますが、道具の準備さえ事前にしっかりやっておけば全然問題ありません。
上腕を縛ると、肘のところにきれいに血管が浮き出てくれるので、その中からなるべく真っ直ぐで太い血管を探します。
針を刺す瞬間はさすがに緊張しました!
でも教えに従って、皮膚を引っ張ってから刺すと、痛みもほとんどありません。
というか、アドレナリンが出ているのか、痛み感じません。
少し刺し込んでやるとすぐにフラッシュを確認。
チューブを繋げて、無事に採血完了です。
うーん、思ってたより楽勝です。
これなら十分、自分でやれそうです。
教官「さ、次はいよいよ他の人にやってもらうわよ」
私「(ドキドキ・・・いよいよこの時がきた!)オ、オーケー!でも犠牲者は誰?」
教官「そのへんの人連れてくるわ」
私「(゚□゚;) そ、そうですか」
言うが早いが、部屋を出て行くインストラクター。
そんな急に採血させてくれって頼んでも、協力してくれる人いるのかなあと思っていると、近くの部屋で誰かに頼んでいる声が聞こえます。
男性の声が二つ返事で「オッケー」と言っているのが聞こえました。
私「(ドキドキ)」
すぐに40代くらいの男性が部屋に連れられて来ました。
お名前も聞きましたが、ここではAさんとしておきましょう。
Aさんに訓練への協力に対して感謝を伝え、さっそく採血に取り掛かります。
緊張はしてましたが、先ほどの自分の採血があまりにもスムーズだったので、自信はありました。
上腕を縛って、さあどの血管にしようかなーと腕を見せてもらいます。
・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・
あ、あれ(;´Д`A
血管どこ??
いくつか薄い血管は見えますが、針を入れられそうな太さのものが全然見当たりません。
私「えーと、血管ないんだけど」
教官「あなたの血管みたいに、ライト振りながら『Hey! 私はここよー』って言ってるような血管の持ち主ばかりじゃないってことよ」
いくら穴があくくらい観察しても、『ここよー』という声が聞こえてきません。
教官「皮膚より少し奥にあると見えにくいことも多いからね。そういう時は触ってみて感じる方がいいわ。ほら、ここなんかわからない?」
言われるがままにそのへんを触ってみても、グローブ越しなのではっきりとは感じられません。
ただ、このへんにありそうだなというのはわかります。
とりあえず(!)そこに刺してみることにします。
平静を装いながら、恐る恐る針を刺し入れます。
・・・・
フラッシュ、きません。
更にもう少し差し込んでみます。
・・・・
やっぱりフラッシュきません。
教官「血管の壁に'沿って針が流れちゃったかな。少し戻してから、右の方に針を向けてみて」
私「ラジャー・・・(アセアセ)」
針を腕に入れたまま少し回して再度差し入れます。
・・・・
やっぱり、フラッシュきません。
教官「おかしいわね。もう血管に入ってるはずだけど」
針を少し抜いてまた刺して、を何度か繰り返すうちに、針が完全に腕から抜けてしまい、血が・・・!!
私「ソソソ、ソーリー!」
慌てて止血する私。
Aさん「ノープロブレム」
もう片方の腕でやってみましょう、という教官のススメに従い、腕を変えて再度挑戦することに。
Aさん、文句の1つも言わずにニコニコと協力して下さいます。
今度は上腕を縛ると、すぐに太い血管が2本見えました。
同じ人の腕でも、右と左でこうも違うものなんですねえ。
この血管なら、大丈夫そうです!
今度こそ、というかこれ以上失敗は許されない、という気持ちで針を刺し入れます。
・・・・・
・・・・・・・
あ、あれ(;´Д`A
そ、そんなはずは。どう見ても、ここに血管あるけど。
フラッシュがきません。
教官「おかしいわねえ・・・ちょっとチューブ差し込んでみましょうか」
私「え、でもフラッシュまだないけど」
教官「たまにそういうこともあるのよね」
言われるがままに、真空の採血チューブを繋げてやると、本当に勢いよく、血がチューブに入り始めました!
私「きた!」
教官「あー、やっぱり。血管に入ってるはずだもの。最初の時も、試してみるべきだったわね」
針のほうの問題なのか、それとも採血される人の特性なのかはわかりませんが、そういうことがあるそうです。
うーん、これは難しい(-_-;)
何とか採血を終え、Aさんに再度お礼を言ってお別れします。
「この先の訓練もがんばって」と、Aさん素晴らしい方です。
私「はーーーーー、難しかった」
教官「良い経験ができて良かったわね。ああいうケースもあるからね、覚えておいて」
私「Aさんには申し訳ないことしたな。ところで、あの方はどこの人?協力してくれてすごく助かりました」
教官「実験チームの1人よ。色々な実験担当してるわ。宇宙飛行士に採血お願いしてるうちの1人だからね、実験台になってと言われて断れやしないわよ」
私「!?」
皆さん、どうぞ良い週末を♪
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