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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

2015年6月24日

船外活動服に体を通してまず私がチェックするのは、水が飲めるバルブ(のど元にある青いバルブ)に口が届くかどうかです。これがうまくできないと、一度服から出て、水の入った袋を取り付けなおさなければなりません(出展:JAXA)

その1

今日の午前中は、船外活動服のフィットチェック(試着)が行われました。
といっても、Class Ⅰ(クラス1)と呼ばれる実際に宇宙で使用される部分は、腕とグローブの部分だけです。
その他の部分はClass Ⅲと呼ばれる地上訓練用のモデルです。

今回のフィットチェックの目的は、全体的な着心地と、自分専用にカスタムメイドされたグローブを使ったリーチ評価です。
リーチ評価というのは、船外活動服上の様々なスイッチやノブを、実際に操作できるか(手が届くか)の評価です。

船外活動は、加圧された状態では宇宙の真空との気圧差で膨らんで、可動範囲も狭くなるので、すぐ目の前にあるスイッチに実はなかなか手が届きにくかったりします。
また長時間身につけるので、体のどこかにホットスポット(服に当たって痛いところ)がないかも厳重にチェックします。
今日はブーツのフィットチェックも慎重に行ったので、宇宙服の中で何もしないで15分待って、痛くなるところがないかなどをチェックしました。

全部で3時間半くらいかかりました。

色々なチェック項目の内容については、それぞれの写真にコメントで解説しておきますので、写真をご覧下さいね。


体を浮かした状態で・・・(出展:JAXA)
ヘルメット内にあるバルサルバデバイスを使って、「耳抜き」をしているところ。宇宙服内の気圧を上げる時には、スクーバダイビングのように「耳抜き」が必要ですが、鼻をつまめないので鼻をこのデバイスに押し付けて息をすることによって耳抜きします(出展:JAXA)

エアロック内で宇宙服に空気と水を供給するケーブルホースが問題なく取り付けられるかをチェック(出展:JAXA)
膝を折り曲げて、膝の部分がちゃんと宇宙服の可動部分に収まっているかを確認(出展:JAXA)

サイドのバイザーが閉められるかチェック(出展:JAXA)
手を伸ばしてみて、きちんとグローブの先まで指が届くかをチェック(出展:JAXA)

右の手元についたミラーで映しながら、胸元のスイッチ操作が問題なく行えるかをチェックしています。スイッチのラベルはミラーに写した時にきちんと読めるように印字されています(出展:JAXA)
首元のスイッチに手が届くかチェック。このスイッチが一番難しかったです!(出展:JAXA)

その2

今日の午後は、もう1つ重要な訓練がありました。
メディカル・エマージェンシーのシミュレーション訓練です。
医学的な非常事態の対処訓練ですね。

訓練は、アナトーリ、ケイトと一緒に受けました。
まず、これまでの訓練で学んだCPR(心肺蘇生法)などの緊急救命手順を再確認して、使用する薬や注射器、呼吸補助器などの使用法を復習しました。

訓練に先立って、インストラクターからは「時間があったら見ておいてね~」と手順書のリンクがメールで送られてきていました。
私は医学的なバックグラウンドは何も持ち合わせていないため、訓練当日に右往左往しないように事前に手順書をダウンロードして、目を通してから訓練に臨みました。
そうしたら、訓練の冒頭でインストラクターが開口一番、

インストラクター「手順書は目を通してもらえたかしら? タク、あなたはダウンロードしてたわね」

私「!? え、ええ、もちろんです!(あ、あぶねー、ちゃんと誰がダウンロードしたかわかるようになってたのか)」

「時間があったら」というのを真に受けなくて良かったです(^^;)

ブリーフィングが終わると、ISSのモックアップを使用したシミュレーション訓練開始です。

今日のシナリオは2本で、1本目は運動器具で運動していたクルーが体調の不良の訴えた後、気を失って心肺停止状態になるというもの。
2本目はみんなで食事中、1人が食べ物を喉につまらせるというもの。

食べ物が喉につまった場合、救助者は要救助者の後ろからお腹の少し上に手を回して、片手でこぶしを作ってもう片手でそれを包み、奥から手前上方に向かって突き上げるイメージでこぶしを引きます。
これはハイムリッヒ・マニューバーと呼ばれる方法で、喉の異物が取れるか、要救助者が意識不明になるまで続けます。

今回の場合、要救助者が意識不明になって心肺停止状態に陥ったため、シナリオ2本とも最終的にはAED(除細動器)を用いたCPRの実践になりました。

クルーが3名いるので(要救助者はマネキン)、この場合は3人で役割分担します。
2人がCPR、いわゆる人工呼吸とAEDの担当、もう1人が薬の投与の担当です。
私たちが習った人工呼吸の手順は、30回胸部を圧迫した後、2回口移しで息を吹き込む、というのを2分間繰り返し、その後AEDで電気ショックを与えます。
後は基本的にはその繰り返しです。

その間、もう1人のクルーが注射器を用意して、要救助者の足の膝のそばに針を打ち込み、そこから薬品を投与していきます。

緊急事態ですので人命救助活動が最優先ですが、時間のあるときに地上の管制センターへの連絡も重要になってきます。
管制センターには常に医師が待機していますので、リモートで必要に応じて助言を受けることができます。

私は1回目のシナリオでは薬の投与係、2回目は人工呼吸を担当しました。
今回は事前にブリーフィングもあり、訓練中も適宜インストラクターから手助けを受けられたので、特に大きな失敗もなく訓練を終えることができましたが、次回のメディカル・エマージェンシー訓練ではぶっつけで自分たちだけで事態に対処することが求められるようです。

というわけで今日は医学的な緊急事態対処訓練がありましたが、明日の午後は5時間のISSの緊急事態対処訓練が待っています。
明日も頑張ります!



 
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