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2016年3月 8日
今日はISSアメリカ区画の緊急事態対処訓練があり、1部の模様は日本の報道陣の方々に公開されました。
2年以上にわたって続いてきたISSシステム訓練の総仕上げとも言えます。
これまでずっと私たちの訓練を取りまとめてきたジョン・レイさんも、冒頭で
「いよいよこれが最後だ。そう思うと、少し寂しいがね」
と思わぬ本音を漏らしていました。
始まりがあるということは終わりがあって、またそれは次の始まりに繋がっていくことでしょう。
さて。
ISSの緊急事態については、もうここで何度もご紹介してきたので今更な感が半端ないので、今日は今回実施したシナリオの中から2つ選んで記します。
①エアロックでの火災発生
これまでと少し異なるのは、冒頭にエアロックを制御するコンピューターの故障が発生したことです。
そうなると、エアロック内のシステムの状態を把握する術が失われるため、火災が発生してもそれを自動で検知することが出来ません。
今回の場合は、このコンピューター自体が火災の火元だったので、幸いコンピューターの故障に伴いエアロックの状況を確認しにいったケイトがすぐに事態を発見することが出来ました。
そのあとは定められた手順に従って、チーム内で役割分担してある通りに対処します。
アナトーリはISSコマンダーとして全体の指揮にあたり、ケイトが端末でのシステム操作を担当、私が実際の消火活動にあたります。
二酸化炭素式の消火器を使用しても鎮火せず、最終的にはエアロック全体の電気を遮断してモジュールを隔離して終わりました。
②きぼうからの空気漏れ発生→応急処置まで
次のシナリオでは、ISSの空気漏れが発生。
気圧計を使って、50秒に1mmHgという、比較的ゆっくりとしたスピードで気圧が低下しているのを確認。
次にその値とチャートを使って、人体にとって危険な490mmHgという目安まで気圧が低下するまでの猶予は約4時間と算出。
そのあとは、例によって各モジュールを隔離しながら原因となっているモジュールを探していきます。
徐々に「犯人探し」の網を引き絞っていくと、きぼうを隔離した時点で気圧の低下がストップ。
つまり、きぼうから空気が漏れていることになります。
ここから先は、これまでの訓練ではやったことのない流れでした。
空気が漏れるスピードが緩いので、地上はこれを修復可能と判断しました。
地上がきぼうへの再入室の準備を進める間、私たちは修復キットを準備し、手順を確認します。
空気が漏れているということは、モジュールのどこかに穴や隙間が開いていることになるのですが、その箇所を探すために超音波探知器を使用します。
空気が漏れる際の高周波の音を、探知器で検知しようというものです。
私がヘッドセットを被り、小型の探知器でモジュール内をスイープしていきます。
やがて探知器が拾ってくる雑音の中で、1か所明らかに他と違う音が発生している箇所を発見。
そのエリアのラックを回転させた外壁部分に、直径1cm強の穴が開いています。
それを応急用のパッチによって塞いで、気圧の低下が止まったのを確認して終了です。
今日は全部で5つのシナリオを実施しましたが、既に阿吽の呼吸が出来上がっている私たちですので、大きな問題もなく対処することが出来ました。
各シナリオ後のデブリーフィングでは更にどこを改善できるかについて話し合い、建設的な議論を行うことが出来ました。
これまで何度も重ねてきた訓練のお陰で、私たちのチームワークもバッチリです。
1人1人が自分の役割を認識して、それを着実に遂行する、良いチームの形が出来上がっているのを実感しました。
このメンバーでのフライトが、待ち遠しいです。
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