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2016年2月18日
今日の午前中はソユーズのシミュレーション訓練がありました。
ソコル宇宙服着用です。
インストラクターから事前に予告されていた通り、手順書なしで臨みます。
メモパッドと時計、シャープペンシル、ライトが入ったニーボードだけを持ってシミュレーターに乗り込みます。
設定としては、居住モジュールで休憩していたところ、居住モジュールで空気漏れが発生して、ソコル宇宙服に着替えて帰還モジュールに移ったものの、手順書を全て居住モジュールに置き忘れてきてしまったというものでした。
現実的にはあり得ない設定です。
そもそも、手順書は基本的に帰還モジュールに置いたままですし、何よりも大事な手順書を忘れてカプセルに乗り込むなんて考えられません。
手順書なしで訓練と聞いて、せいぜい地球に通常帰還する手順を実施する程度かと思っていましたが、いつもの訓練と同じようにインストラクターが容赦なく不具合を投入してきました。
以下、ざっと今日のシナリオの流れを書きます。
①居住モジュールで空気漏れ発生。帰還モジュールに移動して、ハッチを閉める。
②モスクワの管制センターと交信して、もう1周回地球を回ったあとに軌道離脱噴射を行って地球に帰還することを決定
③帰還モジュール内の気圧が急低下したという警報が発生。誤警報であることを確認。
④2つある燃料加圧用のガスタンクの1つの圧力が低下。ガスが漏れている模様。最上流のバルブが閉まったままなので、さらにその上流から漏れていて、ガス漏れを止められない。残りのタンクが健全なので、軌道離脱噴射には影響ないことを確認。
⑤船内の二酸化炭素濃度が上昇開始。除去装置のカートリッジが寿命を迎えた模様。しかし、替えのカートリッジは居住モジュールにあるので、取りに行けない。従って二酸化炭素濃度が危険な領域に達する前に、宇宙服のヘルメットを閉め、酸素を宇宙服に送り込むことに決定。
⑥それに伴い、今度は船内の酸素濃度が上昇開始。火災の恐れが増す酸素濃度40%を超える前に、帰還モジュール自体を減圧させる必要あり。通常の帰還手順ではなく、緊急帰還を行うことに決定。
⑦酸素濃度が30%超えた時点で、帰還モジュールの空気を抜いて真空に。
⑧軌道離脱噴射中、メインコンピューターが故障。自動的にバックアップのコンピューターに切り替え。またエンジンシャットダウンが自動で実施されず、手動でエンジン停止。
⑨弾道モードで大気圏突入、地球に帰還。
とまあ、これだけの内容を全て手順書なしで、自分たちの記憶とシステムに関する知識だけを頼りに切り抜けられたので、我ながら上手く対応できたと思います。
先に、現実にはあり得ない状況と書きました。
確かに手順書を見ることが出来ないような状況になることはまずないと言って良いでしょう。
でもこの訓練を通じて、数多くある手順の中で本当に大事なもの、優先順位の高いものは何なのか、色々なモードがある中でそれぞれのモードを立ち上げるために必要な最低限の手順などを改めて考える機会を得ることが出来、訓練効果としては非常に有意義だったと思いました。
楽しい訓練でした!
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