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2015年5月26日
以前、ロシアでの冬期サバイバル訓練についてご紹介しましたが、今回はもう1つのサバイバル、水上サバイバル訓練について簡単にご紹介したいと思います。
これはソユーズが不時着水したケースを想定した訓練で、夏に実施されます。
以前は本当に海で実施していたそうですが、現在はガガーリン宇宙飛行士訓練センターから車で数十分走ったところにある人造の池で実施されています。
通常、というか不時着水の時点で既に通常ではありませんが、こういった場合には出来るだけ長い間、ソユーズカプセルの中に留まって救助を待つことが推奨されています。
ですが、例えば何らかのダメージでカプセル内に水が浸水してくるようなケースなどでは、カプセル内に留まることを諦めて、外に脱出する必要があります。
更に言うと、それから海の上で救助が来るまでの間生き延びなければなりません。
水上サバイバル訓練は、そのために必要なスキルを学ぶ為の訓練です。
必要なスキルは大きく分けて3つです。
まず、狭いソユーズカプセル内で、ソコル宇宙服から防水・防寒スーツに着替えるスキル。
次に、カプセルから安全に脱出するスキル。
最後に、水上で救助が来るまでの間生き延びるためのスキルです。
一般の方がこの3つを聞いたとき、まず一番簡単そうに思われるのが最初の着替えではないかと思うのですが、実はこの訓練の最大の難所はこの着替えです。
夏ですから、密閉されたカプセルの中は非常に高温になります。
その中でソコル宇宙服を脱ぎ、中間レイヤー、セーター、ダウンジャケット&ズボン、防水スーツを着込まなければなりません。
その暑さたるや、相当なものです。
まず、ソコル宇宙服を脱ぐのが一苦労です。
以前、着方を紹介しましたが、その逆の手順で脱いでいきます。
右席と左席に座ったままこれをやるのは高難度なので、私たちは交代ごうたいで中央のコマンダー席に移動して脱ぎました。
ただ、そのためには席を入れ替える必要があり、それがまた大変なのですが。。。
そのあとも、お互いに協力しながら各種レイヤーを着込んでいくのですが、まず下半身から着ていきます。
上半身を着込むとあっという間に体がオーバーヒートしてしまうからです。
出来る準備を全て整えた上で、上半身を一気に着ていきます。
最後の防水スーツを閉じると、スーツ内はもう蒸し風呂状態です。
外から水の浸入を防いでくれる分、内部の湿気も逃げ場がありません。
ちなみに、訓練中の宇宙飛行士の健康状態をモニターするため、事前に体温計と無線機能を備えた特殊なカプセルを服用します。
そのカプセルが常時体内温度を測定し、無線で外の受信機へデータを飛ばし、それを逐一医師がモニターしています。
着替えを終えると、1人ずつ携帯用サバイバルキットを持ってカプセル外へ。
カプセルは水上では直立して浮かぶようになっているので、体をヨイショッと持ち上げてハッチから出ます。
水面の安全を確認した後、サバイバルキットを水面に投げ入れ、続いて後ろ向きで飛び込んでいくわけですが、ここではカプセルに余計な力を加えないようスムーズに飛び込むことが要求されます。
その飛び込み姿勢の美しさ(?)は、訓練後のデブリーフィングでも厳しく評価されますが、私は残念ながらあまり良い評価をもらえませんでした。
理由は両足が綺麗に揃っていなかったからだそうです。
3人とも脱出した後は、防水スーツが浮力を与えてくれるので、3人で足を組んで安定度を加え、救助が来るまで漂流を続けることになります。
訓練でも、実際にその隊形で浮かんだまま食事をしたり、信号灯を焚く練習をしました。
最後に、救助が到着したという設定で縦列隊形で泳ぐ練習をして訓練終了です。
以上が訓練のおおまかな流れですが、実際の訓練は3日間に渡って行われ、初日は固定されたカプセルを用いた練習日、2日目はロングランと言われる全ての着替えを実施する訓練、3日前はショートランと言われるソコル宇宙服のままで水上で脱出する訓練になります。
ショートランは、浸水のスピードが速くて、防水スーツに着替える時間がないケースを想定しています。
防水スーツの代わりに、救命ベストのようなものを使用して浮力を確保することになります。
写真を沢山掲載するので、そちらにもコメントで補足しますね。
お時間のある方は、ぜひそちらも読んでみて下さい。
今日はメモリアルデーという米国祝日でしたので、明日から久しぶりに訓練再開です!
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