今週のきぼう
「きぼう」船内実験室運用開始から1741日経過しました
「きぼう」船内実験室でマウスの万能細胞を用いた生命科学実験を開始
「きぼう」日本実験棟船内実験室の冷凍・冷蔵庫(Minus Eighty degree Celsius Laboratory Freezer for ISS: MELFI)を使用して、「ES細胞を用いた宇宙環境が生殖細胞に及ぼす影響の研究」(Stem Cells)を3月2日から開始しました。
Stem Cells実験は、マウスの万能細胞の一種である胚性幹細胞(ES細胞)を宇宙環境で長期間冷凍保存し、その後、地上に回収して詳細に解析し、宇宙環境が哺乳動物(マウス)の細胞に及ぼす影響を調べる実験です。この実験は、人類の長期的な宇宙滞在による影響を把握する基礎データを得るとともに、生体に備わるDNA修復遺伝子の機能について明らかにすることを目的としています。
ES細胞を入れた合計5セットのサンプルケースは、ドラゴン補給船運用2号機(SpX-2)でISSに運ばれました。今後、3年間の間に経時的な変化を調べるために、1セットずつ5回に分けて回収する計画です。最初の回収はドラゴン補給船運用3号機(SpX-3)の予定です。
地上へ回収したES細胞を使って、細胞の生存率、DNAの二重鎖切断、染色体異常などを調べます。さらにES細胞を受精卵に導入してマウス個体に発生させ、哺乳動物細胞に対する宇宙放射線の影響を総合的に解析する予定です。
代表研究者の森田隆大阪市立大学教授は、「約7年の準備期間が過ぎ、やっと宇宙実験が始まりました。これから、さらに3年以上の実験が続きますが、宇宙放射線の哺乳動物への影響を慎重に正確に解析していくことが、我々の使命であると考えています」とコメントしています。
Hicari実験の1回目を終了、船外実験装置の運用などを継続
「きぼう」日本実験棟船内実験室では、2月27日から3月4日にかけて、温度勾配炉(Gradient Heating Furnace: GHF)を使用して、「微小重力下におけるTLZ法による均一組成SiGe結晶育成の研究」(Hicari)を行いました。今回の実験で得られたサンプルは、ドラゴン補給船運用2号機(SpX-2)で地上に回収する予定です。
Hicari実験は、JAXAが開発した結晶成長方法であるTLZ法(温度勾配で溶液濃度を制御する方法)を宇宙実験に用い、規則正しい分子配列の結晶を作り、高性能半導体開発の基礎データを取得することを目的としており、半導体産業や光通信技術への貢献が期待されます。
「きぼう」船外実験プラットフォームではポート共有実験装置(Multi-mission Consolidated Equipment: MCE)に搭載した5種類のミッション機器による実験運用のほか、宇宙環境計測ミッション装置(Space Environment Data Acquisition equipment-Attached Payload: SEDA-AP)と全天X線監視装置(Monitor of All-sky X-ray Image: MAXI)の観測運用などが続けられています。