ISS・きぼうウィークリーニュース第376号
2010年3月 2日
今週のきぼう
「きぼう」船内実験室運用開始から635日経過しました
ナノスケルトン実験開始、環境・エネルギー問題への貢献が期待
「きぼう」日本実験棟船内実験室では、3月2日から、環境やエネルギー産業に役立つ高機能素材開発を目指したナノスケルトン実験(NANOSKELETON1)が開始されました。
この実験は、多孔質で骨格自体が高い機能性を有する構造体(ナノスケルトン)を微小重力を利用して作製する実験で、細胞培養装置(Cell Biology Experiment Facility: CBEF)を利用して行います。CBEF内で一定の温度に保たれた実験試料サンプルのナノレベルの微粒子が自己組織化(配列)していき、円筒上のものが集まってナノスケルトンが作り出されます。実験は3月12日まで行われる予定です。
船内実験室ではそのほか、マランゴニ対流のメカニズムの解明を行う「マランゴニ対流における時空間構造」(Marangoni UVP/MaranGogniat)と、画期的な医薬品開発への貢献が期待される「タンパク質結晶生成実験」(JAXA PCG)が順調に進められています。
また、「きぼう」船外実験プラットフォームでは、宇宙環境計測ミッション装置(Space Environment Data Acquisition equipment-Attached Payload: SEDA-AP)、全天X線監視装置(Monitor of All-sky X-ray Image: MAXI)および超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(Superconducting Submillimeter-Wave Limb-Emission Sounder: SMILES)の観測運用が続けられています。
インフォメーション
ICS本格稼働開始を記念して野口宇宙飛行士との交信イベント開催、参加者募集
2月24日深夜、「きぼう」日本実験棟の衛星間通信システム(Inter-orbit Communication System: ICS)を使用して、野口宇宙飛行士らISSクルーと筑波宇宙センター(TKSC)の「きぼう」運用管制室との交信が行われ、初めてICS経由でハイビジョン映像がダウンリンクされました。
ICSは、JAXAのデータ中継技術衛星「こだま」を中継して、「きぼう」からの実験・観測データやシステム情報を「きぼう」運用管制室に送受信することができる、「きぼう」船外実験プラットフォームに設置された日本独自の通信システムです。
JAXAは、ICSの本格稼働開始を記念して、ICSを使って「きぼう」と地上との直接交信の機会を特別に設定し、宇宙や科学、微小重力環境について不思議に思っていることを、宇宙にいる野口宇宙飛行士に対してTKSCから質問する生徒たちを募集します。多数のご応募をお待ちしています。
今週の国際宇宙ステーション(ISS)
最初のISS構成要素打上げから4120日経過しました
クルーはSTS-130ミッション後の休暇を取り、メンテナンス作業などを実施
ICSを経由して「きぼう」運用管制室と交信を行う野口宇宙飛行士(©JAXA)
第22次長期滞在クルーのISS滞在は、ジェフリー・ウィリアムズ、マキシム・スライエフ両宇宙飛行士は151日、オレッグ・コトフ、野口聡一、ティモシー・クリーマー宇宙飛行士は70日が経過しました。
クルーは2月22日から24日にかけてSTS-130ミッション中に取れなかった分もまとめて休暇を取り、休暇の後は、ISS内の機器や実験装置のメンテナンス作業などを行いました。
また、2月24日深夜、野口宇宙飛行士は、ウィリアムズ、クリーマー両宇宙飛行士とともに、「きぼう」日本実験棟の衛星間通信システム(Inter-orbit Communication System: ICS)を経由して、筑波宇宙センター(TKSC)の「きぼう」運用管制室と交信を行いました。
3月の主なイベントとして、米国時間3月18日、ウィリアムズ、スライエフ両宇宙飛行士が、約6ヵ月間のISS長期滞在を終えてソユーズ宇宙船(20S)で地上に帰還します。20Sの分離の前にはISS長期滞在クルーの交代が行われ、野口宇宙飛行士ら3名は第23次長期滞在クルーとなります。
20Sの分離後、野口宇宙飛行士らは、新たなISS長期滞在クルー3名を乗せたソユーズ宇宙船(22S)が到着する4月初旬までの間、3名でISSを運用します。
STS-131ミッションの準備状況
ディスカバリー号がETと結合、STS-131クルーはTCDT参加のためKSCへ
TCDT参加のためKSCに到着したSTS-131クルー(提供:NASA)
NASAケネディ宇宙センター(KSC)では、スペースシャトル・ディスカバリー号(STS-131ミッション)の打上げに向けた準備が進められています。
米国時間2月22日、ディスカバリー号はオービタ整備施設(Orbiter Processing Facility: OPF)からスペースシャトル組立棟(Vehicle Assembly Building: VAB)へ移動しました。同2月24日には、外部燃料タンク(External Tank: ET)との結合が行われました。ディスカバリー号は、同3月3日にVABから射点へ移動する予定です。
山崎宇宙飛行士らSTS-131クルーは、ターミナル・カウントダウン・デモンストレーション・テスト(Terminal Countdown Demonstration Test: TCDT)に参加するため、同3月1日にKSCに移動しました。TCDTでは、射点からの緊急避難訓練や、打上げ直前までのカウントダウン作業を模擬する訓練のほか、ディスカバリー号のペイロードの搭載状況の確認などが行われる予定です。
ディスカバリー号は米国時間4月5日以降に打ち上げられます。