ISS・きぼうウィークリーニュース第332号
2009年2月24日
スペースシャトル・ディスカバリー号(STS-119)の準備状況
NASAはFCVについての解析作業を継続すると発表
FCVの破損したポペット弁の様子(STS-126)(提供:NASA)
米国時間2月20日、NASAは、若田宇宙飛行士の搭乗するスペースシャトル・ディスカバリー号(STS-119)の打上げ日を設定せず、米国時間2月25日までディスカバリー号のメインエンジンの水素ガス加圧ライン流量調節弁(Flow Control Valve: FCV)についての解析作業を続け、改めて打上げ日を設定すると発表しました。
FCVは、スペースシャトルメインエンジン(Space Shuttle Main Engine: SSME)から外部燃料タンク(External Tank: ET)へ供給する水素ガスの量を調整し、液体水素タンク内を一定の圧力に保つための装置で、オービタの3つのSSMEに一式ずつ取り付けられています。2008年11月のスペースシャトル・エンデバー号(STS-126)の打上げ時、SSMEに水素ガスが過剰に流れるという事態が発生し、帰還後の調査により、FCVのポペット弁が破損して破片が発生していたことが分かりました。ディスカバリー号の打上げ時にも同様に破片が発生する懸念があることから、FCVの健全性の確認が行われています。
ミッションの最新情報や詳細については以下のページをご覧ください。
今週のきぼう
「きぼう」船内実験室運用開始から264日経過しました
「きぼう」初となるふたつのライフサイエンス実験「Rad Gene」と「LOH」の細胞の培養を開始しました!
実験の準備を行うマグナス宇宙飛行士(提供:NASA)
2月20日午後9時51分、「きぼう」初となるふたつのライフサイエンス実験「哺乳動物培養細胞における宇宙環境曝露(船内実験室)後のp53調節遺伝子群の遺伝子発現(Rad Gene)」と「ヒト培養細胞におけるTK変異体のLOHパターン変化の検出(LOH)」が開始されました。
実験は、「きぼう」船内実験室の細胞実験ラックに搭載されている細胞培養装置(Cell Biology Experiment Facility: CBEF)を使い、ISS長期滞在クルーのサンドラ・マグナス宇宙飛行士の作業と、筑波宇宙センターからの遠隔操作により行われました。
Rad Geneでは、ガン細胞の発生や増殖を抑える機能をもつp53遺伝子群の働きが宇宙放射線と微小重力環境によってどのように変化するかを調べることにより、ガン予防につながるデータを取得することが期待されます。LOHでは、宇宙放射線による遺伝子の損傷を高感度に検出し、遺伝子が損傷したときに働く修復機構を解き明かすことで、遺伝子の損傷により発生するガンの治療につながるデータを取得することが期待されます。
そのほか、2月16日から19日にかけて、「氷結晶成長におけるパターン形成(Ice Crystal)」の実験が行われました。この実験では、対流のない微小重力ならではの環境で氷の結晶成長過程を詳しく調べることで、他の多くの物質の結晶成長の仕組みを理解し、より高品質な結晶成長の手法の確立などに役立つことが期待されます。
Rad Gene/LOHの開始にあたって寄せられた代表研究者のコメントを以下のページに掲載しておりますので、ぜひご覧ください。また、実験の詳細については以下のページをご覧ください。
今週の国際宇宙ステーション(ISS)
最初のISS構成要素打上げから3749日経過しました
クルーはSDTOやSTS-119ミッションの準備などを実施
SDTOを行うフィンク宇宙飛行士(提供:NASA)
第18次長期滞在クルーのISS滞在は、マイケル・フィンク、ユーリ・ロンチャコフ両宇宙飛行士は133日、サンドラ・マグナス宇宙飛行士は100日が経過しました。
クルーは、軌道上で電子基板を修理するためのハンダ付け技術の試験を行うISSの開発試験ミッション(Station Development Test Objective: SDTO)や、プログレス補給船(32P)で運ばれた物品の整理などを行いました。また、STS-119ミッションで予定されている船外活動に向けて、地上のSTS-119クルーに準備状況を伝えるため、「クエスト」(エアロック)内の宇宙服や船外活動用工具の様子を撮影する作業を行いました。