ISS・きぼうウィークリーニュース第445号
2011年8月23日
トピックス
古川宇宙飛行士は米国の流体実験、医学実験などを実施
引張時のせん断応力に関する米国の研究(SHERE)実験装置の入った微小重力研究グローブボックス(MSG)と古川宇宙飛行士(出典:JAXA/NASA)
米国の教育交信イベントに参加する古川宇宙飛行士(出典:JAXA/NASA)
国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在中の古川宇宙飛行士は、米国の実験である引張時のせん断応力に関する研究(Shear History Extensional Rheology Experiment: SHERE)を2日間かけて行いました。「デスティニー」(米国実験棟)にある微小重力研究グローブボックス(Microgravity Science Glovebox: MSG)を起動し、商用バイオプロセッシング装置(Commercial Generic Bioprocessing Apparatus: CGBA)に保管してある流体モジュールを取り出して実験を行い、取得したデータを地上に送信しました。
SHEREは、微小重力環境で引っ張られているポリマー(高分子化合物)流体を圧迫と引っ張った状態での回転の影響を調べる実験です。この実験からポリマー流体の特性がわかり、コンピュータを利用した製造(CAM)システムにデータを提供することができ、微小重力環境での宇宙服などを修繕するときの接着剤や、地上でのプラスチックや石油製品の製造に活かされます。
また、NASAの統合的心血管(Integrated Cardiovascular: ICV)実験の2回目を開始し、歩行モニタを行いました。この実験では体に電極を付けて心電図や血圧を24時間分記録し、アクティウオッチと呼ばれる腕時計型の生体の活動量を記録する機器を付けてウエスト、ヒップ、足首の活動量を48時間分計測します。
そのほか、8月17日、古川宇宙飛行士はセルゲイ・ヴォルコフ、マイケル・フォッサム両宇宙飛行士とともに、ソユーズ宇宙船による緊急時の地球への帰還訓練を実施しました。古川宇宙飛行士らは地上の専門家と交信しながら、約3時間にわたりコンピュータを使用して手順のシミュレーションなどを行いました。
改良型エクササイズ装置で運動する古川宇宙飛行士(出典:JAXA/NASA)
また、ISS船内の定常的なメンテナンス作業や身体維持のための日々の運動のほか、米国のISSトイレの点検および部品交換作業の支援、米国の科学実験の支援、ISS船内の物資の整理、アマチュア無線による交信イベントへの参加などを行いました。
今週のきぼう
「きぼう」船内実験室運用開始から1174日経過しました
「きぼう」の実験運用開始から3周年、MSPRの初期動作確認などを実施
8月22日、「きぼう」日本実験棟での最初の実験「マランゴニ対流におけるカオス・乱流とその遷移過程」が開始されてから3周年を迎えました。3年の間に生命科学実験や医学研究など様々な実験の実績を重ね、「きぼう」は利用の段階となりました。今後も宇宙ならではの環境を活かした実験を行い、様々な成果創出を目指していきます。
8月19日に多目的実験ラック(Multi-purpose Small Payload Rack: MSPR)の初期検証準備作業を行い、8月22日に初期動作確認を実施しました。今後、運用開始に向けた機能確認を順次実施していく予定です。
今週の国際宇宙ステーション(ISS)
最初のISS構成要素打上げから4659日経過しました
第28次長期滞在クルー
アンドレイ・ボリシェンコ(コマンダー、ロシア)、アレクサンダー・サマクチャイエフ(ロシア)、ロナルド・ギャレン(NASA)宇宙飛行士のISS滞在は139日、マイケル・フォッサム(NASA)、古川聡(JAXA)、セルゲイ・ヴォルコフ(ロシア)宇宙飛行士のISS滞在は74日経過しました。
クルーは43Pの分離と44Pの到着に向けた準備などを実施
射点に到着したソユーズロケット(44P)(出典:S.P.Korolev RSC Energia)
ISSの第28次長期滞在クルーは、プログレス補給船(43P)の分離とプログレス補給船(44P)の到着に向けた準備として、43PとISS間の物資の移送作業や、ロシアの自動ドッキングシステムの確認などを行いました。
43Pはプログレス補給船(42P)に先立ち、8月23日午後6時38分にISSから分離する予定です。43Pは軌道上でロシアの技術試験を行った後、9月1日に大気圏再突入を行い安全に投棄されます。
酸素や水、実験関連機器などを搭載した44Pは、8月24日午後10時00分にカザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、8月26日午後11時38分にISSへドッキングする予定です。
インフォメーション
「きぼう」日本実験棟船内実験室第2期利用テーマの追加募集、締切り迫る
JAXAは、「きぼう」日本実験棟船内実験室の第2期利用期間後半における科学実験テーマの追加募集を8月31日(水)まで実施しています。
今回の募集は、これまでの約3年間にわたる「きぼう」の実運用経験を踏まえ、実験と実験の間に生じる「小規模な実験機会」を最大限活用することを目的としています。詳細はホームページをご覧ください。チャレンジングなテーマのご応募をお待ちしています。