今週のきぼう
「きぼう」船内実験室運用開始から544日経過しました
CERISE実験終了、MAXIが世界最速で全天X線画像を取得
「きぼう」日本実験棟船内実験室では、11月20日午前0時24分から11月28日午前1時09分にかけて、モデル生物(線虫)を使って筋肉の増加と減少のメカニズムを調べる実験「線虫C.elegansを用いた宇宙環境におけるRNAiとタンパク質リン酸化」(CERISE)を実施しました。
本実験では、微小重力環境で線虫を飼育し、幼虫が成虫になった頃(第1世代)と第1世代の線虫が産卵し第2世代が成虫になった頃にサンプリングしました。また、細胞培養装置の遠心機を用い、地上と同じ1G環境で線虫を飼育する対照実験を行いました。
線虫は実験終了後に冷凍保存され、来年2月のSTS-130(20A)ミッションで地上に回収されます。地上で任意の遺伝子の働きを抑える方法(RNA干渉)と、生体内の様々な反応でスイッチとしての役割を果たすタンパク質のリン酸化の、ふたつの方法で解析を行います。
また、「きぼう」船外実験プラットフォームに設置されている全天X線監視装置(Monitor of All-sky X-ray Image: MAXI)において、世界最速で全天X線画像が取得されました。
取得された画像では約180個のX線天体が目視でも認識でき、このような全天カラー画像が観測開始からわずか2ヶ月余りで得られたのは世界で初めてのことです。また、このX線エネルギー範囲での全天画像は30年前に米国の観測衛星が2年間観測したデータを使用して合成されたものがありますが、それ以来取得されておらず、約30年ぶりとなります。
MAXIは同様の観測を繰り返すことにより、全天で1000個を越えるX線天体の1日から数ヶ月にわたるX線の強度変化を90分に1回の間隔で監視します。MAXIは超新星やブラックホールと関わりの深いX線新星、γ線バーストなどの変動現象を世界中に速報し、光や電波などとの同時観測を促進します。さらに、変動する全天X線源のカタログを作成し、これまでに知られていなかった暗いブラックホールや中性子星などを検出するとともに、活動銀河など激動する宇宙の姿を明らかにすることを目指しています。
「きぼう」船外実験プラットフォームではそのほか、宇宙環境計測ミッション装置(Space Environment Data Acquisition equipment-Attached Payload: SEDA-AP)と超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(Superconducting Submillimeter-Wave Limb-Emission Sounder: SMILES)の観測運用が順調に進められています。