ISS・きぼうウィークリーニュース第473号
2012年3月13日
トピックス
SMILESによる高精度な大気観測データの一般向け公開を開始
軌道上のSMILES(出典:JAXA/NASA)
JAXAと情報通信研究機構(NICT)が共同開発し、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟船外実験プラットフォームに取り付けた超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(Superconducting Submillimeter-Wave Limb-Emission Sounder: SMILES)は、絶対温度4K(-269℃)に冷却した超伝導検出器により、2009年10月から2010年4月にかけて、これまでにない高精度の大気観測を行い、観測データを蓄積しました。
JAXAとNICTでは、SMILESの高い観測精度を実証するため、研究公募(Research Announcement: RA)などにより観測データの検証を進めてきましたが、このたび、データの観測精度の高さが確認されたため、一般の利用者向けに観測データを公開しました。なお、観測データのダウンロードについては、SMILESデータ公開サイトへのユーザ登録制となっています。
今回公開するデータは、SMILESで観測した625~650GHzの電磁波の強度を解析することにより得られた、地球大気のオゾンおよび化学的に関連する塩素化合物など合計11種類の大気微量分子の高度分布です。このデータは、成層圏や下部中間圏における大気微量分子の化学的現象を精密に測定したものであり、オゾンホールに代表される成層圏オゾンの変動や地球温暖化など気候変動の解明に大きく貢献します。
SMILESは2010年4月にサブミリ波受信機の局部発信器系に異常が発生し、観測運用の再開は困難と判断されました。現在は後期運用として、4K級極低温冷凍機の技術実証を目的とした運用を継続しています。
SMILESによる観測データ(出典:JAXA/NICT)
今週のきぼう
「きぼう」船内実験室運用開始から1377日経過しました
MSPRとGHFの動作確認を実施、船外実験装置の観測運用などを継続
「きぼう」日本実験棟船内実験室では、3月9日に多目的実験ラック(Multi-purpose Small Payload Rack: MSPR)の動作確認を行いました。
そのほか、3月10日から、勾配炉実験ラックの温度勾配炉(Gradient Heating Furnace: GHF)の動作確認を継続的に実施しています。
「きぼう」船外実験プラットフォームでは、宇宙環境計測ミッション装置(Space Environment Data Acquisition equipment-Attached Payload: SEDA-AP)と全天X線監視装置(Monitor of All-sky X-ray Image: MAXI)の観測運用、超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(Superconducting Submillimeter-Wave Limb-Emission Sounder: SMILES)の後期運用が続けられています。
今週の国際宇宙ステーション(ISS)
最初のISS構成要素打上げから4862日経過しました
第30次長期滞在クルー
ダニエル・バーバンク(コマンダー、NASA)、アントン・シュカプレロフ(ロシア)、アナトーリ・イヴァニシン(ロシア)宇宙飛行士のISS滞在は118日、オレッグ・コノネンコ(ロシア)、アンドレ・カイパース(ESA)、ドナルド・ペティット(NASA)宇宙飛行士のISS滞在は80日経過しました。
軌道上ではRRM実験装置の運用などを実施、地上ではATV3の準備が進む
フェアリング取り付け前のATV3(出典:ESA/A.Novelli)
第30次長期滞在クルーのバーバンク宇宙飛行士らは、科学実験やISS船内のメンテナンス作業のほか、水再生システム(Water Recovery System: WRS)の水処理装置(Water Processing Assembly :WPA)の故障修理などに忙しい日々を過ごしました。
3月7日から9日にかけて、地上からの制御により、「デクスター」(特殊目的ロボットアーム)を使用して、ロボットによる燃料補給ミッション(Robotic Refueling Mission: RRM)実験装置のデモンストレーション運用が行われました。RRM実験装置は、燃料が尽きた人工衛星に軌道上で燃料を補給することで、人工衛星の寿命を延長するための技術実証を目的とした実験装置です。
フランス領ギアナのクールー宇宙基地では、3月23日に予定されている打上げに向け、欧州補給機(Automated Transfer Vehicle: ATV)3号機(ATV3)「エドアルド・アマルディ」の準備が進められています。ATV3は、搭載品を固定するストラップに緩みが発見されたため、作業員がATV3の与圧部内に入り、搭載品を固定し直す作業を行っています。
インフォメーション
平成23年度「きぼう」利用フォーラム総会開催、参加者募集中
ミッション報告会での古川宇宙飛行士(1月16日東京)(出典:JAXA)
JAXAきぼう利用プロモーション室は、きぼう利用フォーラム会員間でのコミュニケーションを活性化させ、「きぼう」利用に向けたアイデア構想に取り組んで頂く環境作りの一環として、第1回「きぼう」利用フォーラム総会を、3月27日(火)に筑波宇宙センターにて開催します。
希望者向けの特別見学ツアーや会費制の交流会を予定しているほか、総会では古川宇宙飛行士も討論へ加わります。
総会への参加は無料ですが、フォーラムへの会員登録と事前申し込みが必要です。詳細はホームページをご覧ください。参加申し込みを引き続き受け付けておりますので、多くの皆様のご参加をお待ちしています。
なお、3月21日(水)開催の「古川宇宙飛行士ISS長期滞在ミッション報告会in Tokushima」と、3月22日(木)開催の「国際宇宙ステーション/『きぼう』利用成果シンポジウム」は、定員に達したため募集を締め切りました。多数のお申し込みをありがとうございました。また、会場にお越し頂けない皆様にもイベントの模様をご覧頂けるよう、インターネットライブ中継の実施を検討しています。詳細が決まり次第ホームページで告知いたしますので、ぜひご視聴ください。