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Gradient Heating Furnace: GHF温度勾配炉(GHF)
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無重力オーブン

最高温度1600℃!様々な温度プロファイルが実現できます。

温度差による対流の違い

地上
対流により、乱れが生じて高品質の結晶ができにくい
宇宙
対流がないので、乱れが生じにくく高品質化させやすい

温度勾配炉ってなに?

温度勾配炉は、国際宇宙ステーション(ISS)で、半導体材料の結晶成長などを行うための実験装置です。半導体材料は家庭にあるほとんどの電化製品や医療用機器、携帯電話などの通信機器、パソコン、ゲーム機器などに使われています。この実験で、半導体素材の飛躍的な進歩が期待されます。

この装置の中に材料を入れ、ヒーターで加熱して溶かし、再び結晶化させます。宇宙空間で結晶化させることで半導体材料の結晶成長メカニズムの解明や、良質な材料を生成することができます。カートリッジの中に材料を入れたままヒーターで加熱できるので、工夫すれば宇宙でフランスパンも焼けるかもしれません。宇宙で焼きたてのパンをほおばる宇宙飛行士の姿をテレビで見る日が来るかもしれませんね。

半導体結晶の上にICチップのパターンを彫り、切り出す

温度勾配炉の原理

半導体材料などの実験材料を入れたカートリッジに温度勾配(温度差)を付けると、加熱されたカートリッジ内の材料のうち、融点以上の部分は溶け、融点以下の部分は固まってしまいます。この状態で、ヒーターの位置を移動させると、融点以下の領域が一方向に広がっていき、次々に固まって結晶が成長します。微小重力下で溶けて液体状になった時は、浮力による流れがほとんど起こらなくなります。固めるときも地上と違い、流れが無いことで質の良い結晶を生成することができます。

全自動で半導体を溶かす

温度勾配炉は、ISS内の「きぼう」日本実験棟に設置される材料実験ラックに搭載されており、以下のような構成になっています。

炉体部(GHF-Material Processing Unit: GHF-MP)

材料の加熱や冷却を直接行っているのが真空チャンバです。真空チャンバは中を真空にできる容器で、真空チャンバ内に3つのヒーターがあり、材料の生成過程に必要な温度をコントロールできます。ヒーターは真ん中に穴が開いた筒状になっており、その穴にカートリッジが入ります。最大で鉄まで溶かしてしまう 1600℃まで加熱することができ、しかも多彩な温度分布を設定することが可能です。

試料自動交換機構(Sample Cartridge Automatic Exchange Mechanism: SCAM)

温度勾配炉では、宇宙飛行士の作業時間を節約するために、実験試料カートリッジを自動で交換可能な、試料自動交換機構を備えています。宇宙飛行士はあらかじめ最大15本のカートリッジを一度にマガジン部に装着します。マガジンは回転するようになっており、クレーンゲームのアームのようなもので、自動的に真空チャンバの方に入れて実験を開始します。

制御装置(GHF-Control Equipment: GHF-CE)

温度勾配炉の全体のコントロール、及び「きぼう」本体との通信(コマンドのやり取り、実験データの送信)などを行います。パネル上のボタンは、主に宇宙飛行士が試料自動交換機構に材料が入ったカートリッジを装着する際に使用します。ボタン操作により、試料自動交換機構のドアパネルの開閉やマガジンの回転などが行われます。

実験試料カートリッジ

本ラックは、2011年1月に「こうのとり」2号機(HTV2)でISSに運ばれました。

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※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA