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2018年8月13日
日本、ロシア、ヒューストンと、毎週のように移動をして活動を行ってきましたが、この週末は、ヒューストンに腰を落ち着けて、ゆっくりすることができました。
ホコリをかぶっていた木刀を出してきて、趣味の居合道のお稽古を少々。居合道は、独りで稽古ができることもあり、宇宙飛行士候補者となる前から細々と続けているのですが、なかなか上達しません。
わたしの趣味のことをご存知の方から、「宇宙飛行に武道の精神はどのように役立ちますか?」と尋ねられることもあるのですが、そこまで深いレベルに達していない自分には、なかなか回答が難しい質問です。
ミッションに向けての準備が始まり、各国を巡って訓練を開始することになったときに、居合道の先生に対して、しばらく稽古を離れなくてはならないことをグチったことがありました。
そのときに先生が、次のように教えてくれたのが心に残っています。
「居合(武道)を学ぶ理由は、人それぞれでいいんだけれど、その技術だけを、やみくもに突き詰めれば良いというものでもない。自分のなすべきことが見つかったならば、それに対して、日ごろ学んだり稽古したりしてきたことを、どのように生かすかが肝心。まずは宇宙飛行ミッションに全力を傾注して、ミッションが終わったらまた一緒にやりましょう」
昔のお侍さんたちが剣術の修行をしたも、その道の名人となって道場を開くため...という人よりも、社会に出てから、家老とか奉行とか、自分に与えられた役職で、しっかりとした勤めをするために学ぶ人が主流だったとか。
そういう観点で、日ごろ習っていることを、宇宙飛行士の仕事に(ちょっと強引ですが)当てはめてみると、例えば、相手と対峙して隙(スキ)を見定める際の気持ちは、自分の置かれた状況を客観的に把握して、問題点を明らかにすることに通じたり、業(わざ)を終えた後の残心(ざんしん)の心得は、作業が終わった後に、ミスや抜けがないかダブルチェックする用心深さにつながったりする気がします。何より、ここぞというところで、エイっとばかりに刀で切り込むときの呼吸は、緊急事態や緊張を要する運用でのとっさの決断力に近い感覚です。
そもそも、習い事を続けてきて、うまくいかなくても試行錯誤を繰り返していくというプロセスそのものが、ミッションに向けて地道に準備を重ねていくことや、ミッションが始まってからも、忙しい毎日を着実に過ごしていくことに似ていると感じました。
剣の腕前はまだまだですが、自分に与えられたミッションを達成しましたので、お稽古も再開です。名人は無理にしても、もう少しばかり、深いレベルの技術を身につけたいものです。
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