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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

ロード・トゥ・EVA(その1)

2018年2月15日

宇宙船の運行、ロボットアームの操作などと並んで、宇宙飛行士の花形の作業が「船外活動(Extravehicular Activity、略してEVAと呼ばれます)」です。EMUスーツという白い宇宙服に身を包んで、宇宙ステーションの外を自在に動き回りながら活動するのはカッコいいものですが、本番当日を迎える前に数多くの準備作業が待っています。

この準備作業は、「ロード・トゥ・EVA」と呼ばれ、本番の2週間前くらいから始まります。

普段は宇宙服だけでなく、さまざまな道具や予備のパーツが詰め込まれ「物置き」状態となったエアロックの片付けを、まずは始めないといけません。この「エアロック」は、日本実験棟「きぼう」に取り付けられている小さなものとは違い、宇宙服を着た宇宙飛行士2人が作業道具と一緒に出入りするものですから、一つの部屋くらいの大きさがあります。一見、雑多に物が詰め込まれているように見えますが、精密機器は丁寧に梱包され、知らないうちにフワフワとどこかへ流れて行ってしまわないように、フックでハンドレールにつながれています。

宇宙服そのものも、小さな宇宙船と言っても良いほどの機能が詰め込まれた精密機器です。新しく製造されることこそありませんが、一定期間ごとに地上に戻してオーバーホール(点検・修理)を行うので、常に最善の状態に保たれています。この宇宙服の機能チェックも大切な準備作業の一つです。

背中のバックパックの中には、酸素タンクと水のタンクが設置されていて、内部の宇宙飛行士の生命を維持するための環境を提供してくれますが、これらのタンクがきちんと充填されているか、酸素や水を循環させるためのファン/ポンプが動くかどうかを確かめます。タンクの中の水は、細菌が繁殖しないように消毒されていますが、定期的に水の入れ替えを行ってクリーンな状態を維持しています。同時に、水質検査も行い、宇宙服の中で異常が起こっていないかも確認します。

宇宙服のサイズはLL、L、Mと3タイプあり、宇宙飛行士の体形に合わせて手と足、胴の長さを伸び縮みさせて調節を行います。無重力環境で長期間生活を続けていると、背骨と背骨の間が広がって身長が伸びたりしますので、「フィットチェック」と呼ばれるサイズ合わせは非常に大切です。

宇宙服は独りで着ることはできず、着付けを手伝ってくれるサポート役が必要です。このサポート役はIV(Intra-Vehicular)クルーと言いますが、この「フィットチェック」は、本番当日の朝にIVクルーが行う船外活動準備のリハーサルにもなっています。当日の朝に宇宙服の着替えでモタモタしてしまうと、貴重な船外での作業時間が少なくなってしまいますので、いかに無駄なく素早く宇宙服に着替えてハッチの外に出るかが、とても重要なのです。

宇宙服は、内部にいる宇宙飛行士が吐き出した二酸化炭素を吸着するキャニスターを取り付けて、空気を再利用するような仕組みが備わっています。EVAを実施する直前に、この二酸化炭素吸着キャニスターの準備をする必要もあります。キャニスターは再利用が可能になっていて、ベイクアウトと呼ばれる特別な加熱処理を行うことで、再び二酸化炭素を吸収する能力を回復させます。

また宇宙服を動かすための動力は、さまざまなバッテリーです。船外活動中に電力がなくなってしまうと大変ですから、それぞれのバッテリーが、いつ製造されて、何回使用されて、どんな状態なのか、細かに記録を取って管理されています。船外活動準備の一環で、これらのバッテリーの充電とともにコンディショニングを行い、最適な状態が保たれるように維持されます。

船外活動に使用するツールの準備も大切です。宇宙ステーションから投げ出されてしまわないようにする安全索や、ツールを宇宙空間に飛ばしてしまわないようにする「テザー」と呼ばれる紐など、目視で異常がないか確認するのは、結構大変な作業ですが、サボるわけにはいきません。

船外活動で使用する「フック」(出典:JAXA)
船外活動で使用する「フック」をテザーに引っ掛けたところ(出典:JAXA)


 
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