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2017年11月14日
国際宇宙ステーションに物資を輸送してくれる補給船は色々ありますが、カナダアーム2というロボットアームを使って捕まえる(これを「キャプチャー」といいます)という運用については、宇宙飛行士の視点では、すべて同様です。
実際、日本の「こうのとり」も、米国の「シグナス」、「ドラゴン」も、それぞれに素晴らしい運用管制チームに支えられていて、優劣つけ難い・・・というのが、もっぱらの評判です。
輸送船のキャプチャーは、軌道上の宇宙飛行士2人が一組となって行う、大掛かりなオペレーションです。
操縦桿を握ってロボットアームを動かすのがM1(エム・ワン)、その相棒役で手順書を確認したり、地上と交信したり、宇宙船に対してコマンドを入力するのがM2(エム・ツー)と呼ばれます。
とはいっても、宇宙飛行士がアクティブに関わるのは、最後のクライマックス。数時間前から、徐々に宇宙ステーションに近づいてくる補給船のコントロールは、地上の運用管制チームの独壇場です。
近づいてくる宇宙船を写真に収めたり、コンピュータを使ってキャプチャーの練習をしたり、あるいは最終手順の確認をしたりしながら、宇宙飛行士は、今か今かと、補給船の到着を待ちます。
補給船が、宇宙ステーションからだいたい200メートルくらいより近くなると、いよいよ宇宙飛行士もスタンバイします。宇宙ステーションの外壁に備え付けられたモニターを使って、補給船が正常に接近していることを監視します。
「オーバーレイ」といって、モニターに映った補給船に重ねるように、画面上に予想される飛行経路がアニメーションで表示されるようなシステムになっていますので、2人の宇宙飛行士は、お互いに確認し合いながら、「想定通りの飛行経路で進んでいる」とか、「想定に比べて、右舷にずれている。ずれの大きさは、機体の幅の半分くらい」などと、地上の管制チームに報告します。
補給船が、宇宙ステーションから10メートルほどの「キャプチャーポイント」に到着したら、いよいよ宇宙飛行士の大仕事が始まります。腕を折りたたんだような状態のロボットアームの先端から、補給船のグラップル・シャフト(把持ポイント)まで、約5メートルくらい。巨大なロボットアームを揺らさないようにゆっくりと腕を伸ばしていきます(以前の記事もご参照ください)。
「キャプチャーポイント」で静止している(ように見える)補給船は、実はこの段階では自動操縦モードとなっています。宇宙船自体が、宇宙ステーションとの相対的な位置を感知し、その場に留まるように、必要ならばスラスターを噴射して、位置と姿勢を制御しているのです。
しかし、巨大なロボットアームで宇宙船を掴む、まさにその瞬間にスラスターを噴射して急な力がかかってしまうと大変ですので、ロボットアームが2.5メートルほどまで近づいたところで、コマンドを入力し、補給船のスラスターを完全に停止させます。
これを、「フリー・ドリフト」と呼んでいます。
「フリー・ドリフト」は、補給船の位置や姿勢を制御するのを止めてしまった状態ですから、ただそこに漂っているだけの状態です。宇宙ステーションとの相対速度はほぼゼロなので、単にその場に止まっているだけのように思えますが、実際には秒速約8kmというとんでもないスピードで飛んでいる数トンの宇宙船が、スラスターを止めて姿勢制御なしでいるという、すごい状態です。
この状態で、万一、宇宙ステーションやロボットアーム、あるいは補給船自身に異常が起こると極めて危険な状態となり得ますので、この「フリー・ドリフト」からキャプチャーの完了までは、宇宙飛行士も管制官も緊張が最高潮となる時間帯です。
スラスターによる姿勢制御のなくなった宇宙船がフラフラ位置をずらしていっても、確実にロボットアームでつかみ取れるように、宇宙飛行士は難しい条件での訓練を受けています。
幸運なことに、最初の補給船「こうのとり初号機」のミッションでは、「フリー・ドリフト」に入った後でも「こうのとり」の姿勢はきわめて安定していて、十分な訓練を積んだ宇宙飛行士ならば、安全・確実に補給船のキャプチャーが行えることが証明されました。
このおかげで、今では、この「キャプチャー方式」が宇宙ステーション補給船の標準となったのです。
あの感動をもう一度。油井宇宙飛行士による、「こうのとり5号機」のキャプチャーの様子は、コチラ をご覧ください。
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