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2018年2月26日
宇宙ステーションで生活を始めて一番驚いたのは、仕事をして、食事をして、寝るという日常の営みが、地上と変わることなく行われているという、よく考えれば当たり前の事実です。
調理器具(?)といえば、食事を温める電熱器と給湯器くらいしかありませんが、栄養を考慮された宇宙食は味も良く、仕事の疲れを癒してくれます。
「標準食」と呼ばれるNASAの宇宙食は、NASAとそれに協力するJAXA・ユーロッパ宇宙機関・カナダ宇宙庁から送り出された宇宙飛行士たちが、毎日食べる宇宙食メニューです。昔ながらの缶詰は意外にあまりなく、お湯を加えて戻すフリーズドライの食品と、調理されてすぐ食べれる状態のものがパウチに入った食品が主流です(一方、ロシアの宇宙食は、缶詰とフリーズドライが半々くらいです)。
「肉・魚食品」、「朝食」、「サイドメニュー」、「スナック・フルーツ」、「ドリンク」などと種類別に分けられて、1週間〜2週間分くらいがまとまって梱包されています。新しいパックを開けると、各人が好きなものから食べていくというシステムなのですが、どの食品もそれなりに美味しいのと、好物であっても同じものを食べ続けると飽きてくるので、みんなが嫌いなものが最後に残って誰も手を付けないということはほとんどありません。
クルーが入れ替わっても常に共通の「標準食」とは別に、宇宙飛行士個人が自分で選んで持っていける宇宙食は「クルー選択食」と呼ばれます。割合としては当人が食べる量全体の20〜30%くらいでしょうか。わたしはもちろんJAXAの用意してくれた「宇宙日本食」を持ってきましたが、一緒にミッションを行っているNASAの宇宙飛行士たちは、「標準食」メニューにはないNASAの宇宙食や、ロシアの宇宙食などを選んで持ってきているようです。
美味しい宇宙食といえども、1〜2週間ごとに同じメニューのパックを開けていくので、どうしても食べ飽きてきます。そんなときに、自分で選んで持ってきた「選択食」は、いつもと違う食事を楽しむことができて、より一層美味しく感じるものです。
そんな宇宙食ですが、われわれが苦労しているのは、とにかくたくさんの量を食べないといけないということです。長期にわたって宇宙滞在をしていて、一番大切なのは骨と筋肉を弱らせないことですが、このため毎日の体力トレーニングとは別に、体重を減らさないように毎日3,000キロカロリー近くの食事を摂ることが推奨されているのです。食べた食品を登録することで、毎日の食事摂取状況を確認することができるアプリケーションで栄養管理が行われていますが、
「あぁ、まだ2,000キロカロリーしか食べれていない!」
「オレなんか、まだ1,800キロカロリーだ」
という会話が、常にダイニングテーブルの前で交わされています。まるで相撲部屋の力士か、大学体育会運動部の合宿所みたいです。
ちなみに推奨食事量はNASAの担当者が宇宙飛行士の元の体重や身長から計算してくれます。体重がベースだと何となく、筋肉量があって、体重の重い宇宙飛行士たちの方がたくさん食べないといけないように思われますが、身長のせいか、背が高い割にはヒョロヒョロして一番体重の軽いわたしが、彼らよりもたくさん食べないといけない、というのがつらいところです。
「おやつはあるんですか?」とか、「宇宙で甘い物は食べれますか?」という質問を受けることがあります。宇宙食のスナックとして、チョコレートやナッツ類、ドライフルーツ、シリアルバーなど、いろいろな種類が用意されていて、仕事の合間を見つけては、間食をしてカロリー摂取に励んでいます。
飲み物も豊富で、アルコール飲料こそありませんが、コーヒー、お茶、ジュース、ミルク、ミルクシェークなどを楽しむことができます。いずれも粉末状のものを水やお湯を加えるものですが、それなりに美味しいと感じます。実験サンプルや薬品を冷やして保管するための冷蔵庫の一つをクルー用に使用することが許されているので、お気に入りを冷やして飲むこともできるようになっています。
宇宙食とは別に、定期的に物資を運んできてくれる輸送宇宙船に乗せられた生鮮食品(果物など)もあり、宇宙の食生活は実にバラエティー豊かです。
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