このページは、過去に公開された情報のアーカイブページです。

<免責事項> リンク切れや古い情報が含まれている可能性があります。また、現在のWebブラウザーでは⼀部が機能しない可能性があります。
最新情報については、https://humans-in-space.jaxa.jp/ のページをご覧ください。

サイトマップ

宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センター宇宙ステーション・きぼう 広報・情報センタートップページ
  • Menu01
  • Menu02
  • Menu03
  • Menu04
  • Menu05
  • Menu06
  • Menu07

JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

安全に関する考え方:冗長(じょうちょう)設計

2017年10月31日

安全に関する考え方は、冗長(じょうちょう)設計というシステムのデザインにも表れています。
「冗長」という言葉には、「長たらしい」とか「無駄」というネガティブな印象があるかもしれませんが、この場合は、何か不具合があっても、それをカバーして本来の働きを維持するための予備の機能を持っていることを言います。

例えば、宇宙ステーションの一番大切な制御コンピュータは、3台備え付けられていて、そのうちの1台が主系として常時宇宙ステーションの制御を行っていて、もう1台は予備(従系)として、宇宙ステーションがどのように制御されているかの監視を行っています。
何かの原因で主系のコンピュータが動かなくなった場合には、即座に従系のコンピュータが代わりに宇宙ステーションの制御を担ってくれます。
さらに、この2台目のコンピュータにも不具合があった場合には、最後の3台目のコンピュータを使って宇宙ステーションの制御を行うことができます。

宇宙飛行士の生命に関わるような重要な機器は、このように2つの故障が起こっても大丈夫な設計となっており、これを「2故障許容」と呼んでいます。
制御コンピュータの場合は、同じ機器を3つ備えることで、この「2故障許容」を成立させています。

別の例としては、人間の呼吸に必要な酸素を作り出す「酸素発生装置」もまた、宇宙飛行士の生命に関わる重要な機器として挙げることができます。
この「酸素発生装置」は、アメリカ製のもの、ロシア製のものがあり、どちらか一方に不具合が起こっても大丈夫なようになっています。そのときに宇宙ステーションに滞在している宇宙飛行士の人数にもよりますが、「酸素発生装置」では十分な量の酸素が供給できない場合は、酸素を発生させる使い捨てキャニスターが宇宙ステーションに常備されています(実際は、酸素発生装置は重要な機器なので、故障が起こった場合には最優先で修理が行われるため、酸素キャニスターを使用する機会はめったにありません)。
これは、3つの別の手段を準備することで「2故障許容」を成立させている例です。

このような冗長設計は、何らかの不具合が起こった場合に、「こんなこともあろうかと」と、別の代替手段が用意されているというものですから、宇宙飛行士の立場からすると、これほど頼もしいことはありません。しかし、ある一つの機能のために複数の予備の機器やシステムが必要になるため、設置スペースや、宇宙への打上げコストなど、大きな無駄にもなりえるものです。

安全性を確保しつつ、全体として無駄とならないように、バランスを取りながらシステムのデザインや設計を行うところに難しさがあり、机上の理論では、どんなに頭をひねっても、どうしようもない部分もあります。
結局、実際に機器を作り、運用することで得られるノウハウや経験に勝るものはなく、その点において、「きぼう」や「こうのとり」のミッションを通して培った日本の実力は、これからの世界の有人宇宙開発をリードするものであると、わたしは考えています。



 
Copyright 2007 Japan Aerospace Exploration Agency SNS運用方針 | サイトポリシー・利用規約