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2017年11月10日
「きぼう」での最終訓練を終えた後は、ドイツのケルンに移動して、ヨーロッパ実験施設「コロンバス」の最終訓練です。「コロンバス」の管制センターはミュンヘンにあるのですが、宇宙飛行士の訓練は、ケルン・ボン空港に隣接したドイツ宇宙機関の一角にある「ヨーロッパ宇宙飛行士訓練センター」で行われます。
ここには、筑波宇宙センターの「きぼう」訓練施設と同じような、「コロンバス」実物大モックアップ(訓練用の模型)があり、訓練チームが勤務しているのです。
現在、イタリア人のネスポリ飛行士が軌道上滞在をしていることもあり、「コロンバス」のシステムは全て健全。修理やメンテナンスに関して、定期的に行うものを除けば、わたしがする仕事は残っていないそうです。
その代わりというわけでもないのですが、12月からのミッション中に予定されているさまざまな宇宙実験に関する訓練や事前説明をみっちり受けてきました。
もともと国際宇宙ステーションのミッションは、日本人だから日本の作業を、ヨーロッパ人だからヨーロッパの作業を、アメリカ人だからアメリカの作業をする・・・ということにはなっていません。USOS(US Orbital Segment)と呼ばれる宇宙ステーションの前半分は、日米欧加の各国で協力して運営を行っています。
その時々で軌道上に滞在している宇宙飛行士の作業分担によって、日本人飛行士がヨーロッパの作業もしますし、アメリカ人飛行士が「きぼう」で連日作業を続けることも、珍しいことでは全然ありません。
(なお、宇宙ステーションの後半分はロシアの管理で、ここでの作業は、今のところ、ほぼ完全にロシア人宇宙飛行士が専属となっています)
わたしが被験者となって参加するヨーロッパの実験は、船外活動で使うエアロックの中に入って無重力かつ低気圧の環境で肺の機能を調べる「エアウェイ・モニタリング」や、オデコとみぞおちに体温センサーをつけて宇宙生活をする中で体内時計がどのように変化するのかを測定する「サーカディアン・リズム」、宇宙環境へ体が慣れるまでの間に頭痛が起こりやすいのではないかという仮説を検証する「宇宙頭痛」などの医学実験があります。
また、「きぼう」で実験を続けている静電浮遊炉(ELF)と似たような実験装置で、合金でできたサンプルを浮遊させながら熱を加えて溶かしたり、冷やしたりして物性を調べるというEML(Electoro Magnetic Levitator)という装置のアップグレードなど、ヨーロッパの宇宙実験に関わる重要な作業を任される予定もあります。
ヨーロッパ宇宙機関の計画している作業は、宇宙実験だけでなく、将来を見すえた技術検証もあります。
小型カメラとヘッドセット、スマートフォンを組み合わせた「mobiPV」というシステムは、リアルタイムで地上の管制官と交信をしつつ、宇宙飛行士が効率的に作業をこなせるというウェラブル装置です。
また、軌道上にいる宇宙飛行士が、地上で作業するロボットを操作する実証が行われており、わたし自身もJustinを使った検証に参加できるかもしれません。
お世話になってインストラクターのみなさんへの恩返しは、しっかりとした仕事をしてくることだと、気持ちを新たにしたヨーロッパでの最終訓練でした。
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