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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

「きぼう」のシステム:環境制御系サブシステム

2017年11月 7日

「きぼう」の内部で宇宙飛行士が安全に快適に過ごすための「環境の制御・維持」という観点では、前回の「熱制御系サブシステム」も大切なのですが、いわゆる生命維持システム(ECLSS:イークレスと読みます。Environmental Control and Life Support Systemの略)は、環境制御系サブシステムとして、別に考えられています。

具体的には、宇宙飛行士が呼吸をするための空気に関するシステムです。地球上では、当たり前すぎてあまり意識しませんが、呼吸するための空気がなければ、人間は生きていくことができません。そして、宇宙環境では、この空気をきちんと管理しないといけないのです。

空気は、おおよそ78%の窒素と21%の酸素、そして残りの約1%は、そのほかの微量のガスが含まれていますが、この中で人間の生命維持に必要なのは酸素です。われわれは呼吸によって酸素を取り込んで、代わりに二酸化炭素を排出しています。

宇宙飛行士が吐き出した二酸化炭素を取り除き、少なくなった酸素を補充することで、地上と同じような空気を再生するシステムが、アメリカ・モジュールには備え付けられています。

「きぼう」そのものには空気を再生する機能はないので、アメリカ・モジュールで再生された清浄な空気を取り込み、循環させるのが、「きぼう環境制御系サブシステム」の役割です。

「なんだ、「きぼう」の環境制御って、大したことしてないじゃないか」・・・とは思わないでください。

宇宙環境では、空気を循環させることは、生命維持に直結する重要な機能なのです。というのも、重力による対流がないために、強制的にファンを回して空気を混ぜないと、口や鼻の周りにだけ二酸化炭素の濃度が高くなり(これを「二酸化炭素ポケット」と呼びます)、息が苦しくなったり、そのまま放置すると窒息したりしてしまうのです。

このため、宇宙ステーションの部屋(モジュール)同士が、空気を通す配管でつながっていて、アメリカ・モジュールできれいになった(二酸化炭素を取り除かれた)空気が、順繰りに各部屋を回っていくような仕組みになっています。同時に、「きぼう」の中で宇宙飛行士が吐き出した二酸化炭素は、この「モジュール間」の空気の流れに乗って最終的にはアメリカ・モジュールに戻され、空気再生装置のお世話になることで再利用されます。

空気の流れは「モジュール間」だけでなく、「モジュール内」にも作られています。

天井と壁の交わるカドには空気の吹き出し口が、床と壁の交わるカドには空気の取り入れ口があり、「きぼう」内部の空気をかき混ぜてくれます。

これにより、「きぼう」内部で、有害な二酸化炭素を拡散することができますし、さまざまな機器や実験装置から放熱された温かな空気と、熱制御系サブシステムで冷やされた空気をかき混ぜて、一定の室温を保つことができます。

また、宇宙飛行士の安全の観点では、「モジュール内」の空気の流れによって、キャビンに設置された火災報知器(煙センサー)に空気を送るという役割も重要です。「きぼう」のキャビンの空気をぐるぐるかき混ぜているおかげで、何らかの原因で「きぼう」内部に火災が発生した場合には、火災報知器が煙を感知してくれるのです。

この火災検知のシグナルは、制御コンピュータを通して「環境制御系サブシステム」に働きかけ、「モジュール間」と「モジュール内」の両方の空気の流れを遮断してくれます。

火災が起こるには、燃えるもの、高い熱、空気(酸素)の3つの要素が必要ですが、このうちの一つである空気の流れを止めてしまうことで、空気(酸素)の供給が止まり、火は燃え広がることができず、自然に鎮火することになります。

空気の流れを人工的に作ったり、わざと止めたり、「環境制御系サブシステム」は、宇宙飛行士の生命の維持と安全を賢く管理してくれているシステムなのです。

(出典:JAXA)

環境制御・生命維持システム(ECLSS)のイメージ。詳しくはコチラ



 
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