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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

L-3ヶ月:船外活動訓練 その1

2017年9月26日

打ち上げの日から数えて、「L-(マイナス)○日」=打ち上げ○日前・・・というように表現します。
みなさんに、宇宙飛行士の活動や、宇宙ステーションの運用についてお知らせしているこのブログでも、だんだん日記のように、その日にあった出来事を報告する形が多くなってくると思います。
ヒューストンの最終訓練も、あとわずか。先週は、最後の船外活動の訓練を終えました。

EMU宇宙服を着て、宇宙ステーションの外に出て行う作業を、船外活動と言いますが、地上では、巨大なプールの中に実物大の宇宙ステーションの模型を用意し、水中用に改造した宇宙服で、中性浮力を無重力に見立てて訓練を行います。(訓練施設は、Neurtal Buoyancy Labと呼ばれます。Buoyancyとは、浮力という意味)

訓練の朝は、7時にプールデッキで、自分の使うツールを準備するところから始まります。宇宙服の前面にT字型のバーが付いていて、ここに作業で使う道具をぶら下げて行くのです。工事現場の作業員が、腰につけた道具袋にレンチやらスパナやらドライバーやらを持っていくのに似ています。
宇宙での作業に主に使うのは、PGTと呼ばれる電動ドライバーと、テザーと呼ばれる巻き取り式の「つなぎ紐」。何せ無重力では、手を放せばすぐにモノがフワフワどこかに行ってしまいますので、どんなものにも、このテザー(つなぎ紐)をつけて、モノをなくさないようにします。

これは、自分自身についてもあてはまります。両手を離して作業をするためにも、自分自身を宇宙ステーションにつなぎ留めるための安全索(これをセーフティー・テザーと呼びます)を常につけていないと、宇宙ステーションから完全に離れてしまい、宇宙を漂うことになったら大変です。

モノを一瞬たりともフリーでフワフワさせないようにする「テザー」ですが、これがなかなか面倒です。
例えば、船外で故障した機器を交換するにも、次のような手順が必要です。
(1) 交換するための新しい機器を現場まで持っていくのに、自分の宇宙服にテザーつなぎ留めておく必要がある(手でしっかり持っているつもりでも、間違って放してしまう可能性があるので)。
(2) 現場で、故障した機器を取り外す前に、まずはテザーでつなぎ留めてから、電動ドライバーでネジを緩めて外す(ネジを緩めてしまうと、フワフワ自由になってしまうので、その前にテザーをつける)。
(3) 故障した機器を取り外し、持ってきた新しい機器を取り付ける。
(4) 新しい機器が、きちんとネジで留めた後に、テザーを外す。
(5) 取り外した後の、故障した機器は、テザーをつけたまま船内に持ち帰る。

書いてみると、そんなに面倒臭い感じではないですかね?

この「テザー」は、鋼鉄製の巻き取り式ワイヤーの両端に小さなフックがついているような代物です。
船外活動をしている間は、ずっとフックを掛けたり、外したりを続けている・・・といっても過言ではありません。加圧された宇宙服のグローブを握って開いてを繰り返していると、まるで握力を鍛えるハンドグリップをずっと続けているみたいで、結構な重労働です。



 
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