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2018年1月 9日
ソユーズ宇宙船の打上げから、宇宙ステーションへのドッキングまでご紹介するのに、年を越してしまいました。宇宙ステーションに到着して、もう3週間。すっかり新しい生活にも慣れて、バリバリ仕事をこなしていますので、その点はご安心ください。
地球を周回する軌道を変えて少しずつ宇宙ステーションに近づくためには、宇宙船の現在位置と飛行速度から、専門家の計算により、エンジン噴射のタイミングと、どのくらいの推力で噴射を行うかが決められます。12/17の10時21分(モスクワ時間)にソユーズロケットで打ち上がった後に第1回目の軌道修正エンジン噴射、第2回目の軌道修正噴射は日付が変わって翌日のお昼くらい。ずいぶん長い待機時間で、宇宙船のシステムのチェックや地上管制センターとの情報交換を済ませると、狭い船内でやることもなく退屈に感じるくらいでした。
第3回目のエンジン噴射は、3日目の朝。この第3回目のエンジン噴射から、いよいよ国際宇宙ステーションへのランデブーが始まります。打上げの後に脱いで乾かしていた宇宙服に身を包むと、待機中にすっかりリラックスしていた気分が、自然と仕事モードに切り替わります。
操縦席の座席に収まりベルトを締めると、船長がコクピットの様子を録画するためのカメラのスイッチを入れます。
「世界中の何億って人が見るビデオだ。笑顔を忘れないようにな」
明るく豪快な性格で、いつもはおちゃらけていることの多いシュカプレロフ船長ですが、こうやってさりげなく、新人のティングル飛行士とわたしをリードしてくれるところにベテランの味を感じます。
モニター上で宇宙ステーションとの距離が500kmを切ったところで、ゴーという音とともにメインエンジンが噴射し、座席に押し付けられるような加速度を体に感じました。予定通りのエンジン噴射です。モニターに表示される、宇宙ステーションとの距離がどんどん縮まっていきます。1時間も経たないうちに、相対距離は100kmほどまで近づきました。
「宇宙ステーションを視認!」と、シュカプレロフ船長。船長席には高精度の潜望鏡が備え付けられていて、ちょうど船長の膝の間のガラス面に外の様子が映し出されるのです(左右の操縦席からは残念ながら何が映っているのか見ることはできませんが)。
さらに小さなエンジン噴射を繰り返しながら、徐々に相対速度を落としつつ、宇宙ステーションとの距離を詰めていきます。
「そろそろモニターでも見えるようになってきたぞ」
船長が操縦パネルのボタンを押して画像を拡大して見せてくれました。確かに、中央に光輝くのはシミュレーションで見覚えのある宇宙ステーションです。コクピットの外には宇宙空間が広がっていて、モニターに映っているのが実物の建造物というのが、なんだか嘘のように感じます。
距離が2km(2,000メートル)くらいのところから、相対距離と相対スピードを手順書のチャートにプロットしていくのが右席のわたしの役割でしたが、見事に予定通りの動きです。訓練ではここで自動ランデブーシステムに故障が起きて大忙しになるのがパターンなのですが、ホンモノの宇宙船のシステムはびっくりするほど正確です。
400メートルの距離で一旦停止し、宇宙ステーションの下面のドッキングポートの真下にくるように位置を合わせます。ここまで近づくと、日本の「きぼう」や、ロシアの「サービス・モジュール」など、宇宙ステーションの一つ一つのモジュール(部屋)もよく分かります。モニター越しではなく宇宙ステーションを見たいと、窓の外に目を向けましたが、右舷側はちょうど太陽の方向でまぶしく、日よけのカーテンを開けることはできませんでした。左舷側のティングル飛行士が、「おおー、すごいなぁ」と、しきりに感心しているのが、ちょっとだけ羨ましいと思いました。
システムはすべて正常に作動していて、全自動でドッキングを行ってくれますので、操縦席の宇宙飛行士の役目は、宇宙船がプログラムの通りに動いているのを確認するだけです。空軍アクロバット・パイロット出身の船長には退屈なドッキングだったかもしれませんが、手順書のチャートをほとんどそのまま、なぞるようにドッキングする宇宙船の動きは、わたしにとっては驚きと興奮のひと時でした。
「宇宙ステーションとコンタクト、機械的結合を確認、ドッキング成功!」
モスクワ時間12/19の11時39分、国際宇宙ステーションに到着しました。
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