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2018年2月16日
エアロックや宇宙服などの整備と並行して、地上と軌道上とでチームとしての準備も進められます。
船外活動(EVA)を実施するにあたっては、毎回、専属の専門チームが編成されます。ヒューストンのフライトディレクターをリーダーに、EVA統括官、さらにその下に、宇宙服、ツールや機器、エアロック、ロボットアームなど、さまざまな分野のスペシャリストがチームメンバーとしてサポートを行います。
また、船外で行う作業の細かな手順を作成する担当エンジニアを中心に、地上にいるミッションサポートの宇宙飛行士たちが、繰り返しNBL(Neutral Buoyancy Laboratory: 無重量環境訓練施設)という訓練施設で作業手順の検証を行います。
サポート宇宙飛行士の中でも、特にそのEVA担当に任命された飛行士(多くの場合は、EVA経験のあるベテラン飛行士)は、EVAチームの一員として、本番当日は船外活動を行うEVクルーメンバーと直接交信をして、作業についての指示を出す役となります。これはEV(Extravehicular Activity)クルーに対して、グランドIV(Intra-Vehicular Activity)と呼ばれます。実際には船内(Intra-Vehicular)から支援するわけではないのですが、実施する作業について何度も繰り返しNBL訓練を行い、誰よりも一番内容を熟知している宇宙飛行士が、本番で交信役を務めるというのは、実に頼りになるもので、まるで第三のクルーメンバーとして一緒に船外活動を行うような役どころです。
NASAの運用管制センターからEVAを支援する宇宙飛行士
作業手順を担当するエンジニアを中心としたNBLでの検証は、本番の数ヶ月前から開始され、複数の宇宙飛行士が同じ内容で作業を行ってみて、どのような順序で実施すれば効率的で、安全に遂行できるかが評価されるとともに、ロボットアームによるサポート要領や、修理・交換する機器や使用するツールに不具合があったときにどのような対処をするかの検討が進められます。
こうした地上の専門チームの入念な下準備のおかげで、本番当日2週間くらい前から軌道上の準備が始まる頃には、ほぼ完成に近い手順書が準備されて、予想される不具合や異常事態への対処方法も定められています。
軌道上にいるわれわれEVクルーには、作業内容を説明する資料と作業手順書が配布され、自分たちの担当するEVAの内容について勉強を行います。コンピュータの特別なアプリケーションで作業の段取りをアニメーションとして見ることができたり、地上の訓練風景や保管されている本物の機器を操作する様子を収めたビデオを観たり、あるいは地上と結んだカンファレンスで、直接、地上の担当チームから説明を受けたりと、勉強時間はかかりますが、当日に行う作業について頭の中で具体的イメージできるほど詳しく正確に理解できるようになります。
事前に準備された手順書は、誰でも同じように作業ができるような標準的な書き方となっていますが、EVA作業を担当する宇宙飛行士ひとりひとりで使う道具のセットの仕方が微妙に違ったり、作業のやり方にも個人ごとの好みや工夫がありますので、地上と宇宙ステーションを結んだカンファレンスを繰り返し、少しだけ手直しが行われます。
色々な資料や準備されて、通信手段も発達しているとはいえ、遠く離れた地球と宇宙とで協調して作業を行うのは、やはり大変です。一つの目的に向かって全員の意識が合うようにするところに、チームリーダーであるフライトディレクターや、EVAの統括官の手腕が現れます。
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