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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

宇宙実験:IPVI(頭蓋内圧の簡便な評価法の確立)

2017年10月 3日

(出典:JAXA)

先日、NASAジョンソン宇宙センターの宇宙科学部門との打合せで教えてもらった「Space Station Research Explorer 」というアプリにはまっています。(英語ですが、スマートフォンのアプリとして無料ダウンロードできます)
今週は、わたしが軌道上で参加する予定の宇宙実験について、このアプリケーションを使って、いくつかご紹介させていただこうと思います。

先週、日本大学の岩﨑賢一先生たちの研究チームに、宇宙飛行前のデータを測定していただいたのが、「IPVI」という実験です。正式名称は「Non-invasive assessment of Intracranial Pressure for space flight and related Visual Impairment=無重力での視力変化等に影響する頭蓋内圧の簡便な評価法の確立」という、長い名前です。

「無重力の視力変化」とありますが、ここ数年、宇宙に行った宇宙飛行士の視力が変わる・・・ということが宇宙医学の分野で注目を浴びるようになりました。宇宙に行ってしばらくすると、遠くのものが見えやすくなったり、手元の文字が見えにくかったりするようになるのです。
不思議に思った航空医師たちが詳しく宇宙飛行士の目について検査してみると、目の奥、視神経がつながっている「視神経乳頭(ディスク)」という部分が腫れていたり、本来球体の目玉が、あたかも後方から押されたようにわずかに変形していたり、そのせいで網膜にしわが寄っていたりすることが分かってきました。

どうして、宇宙に行くとこのような目の変化が出るのか分かりませんが、無重力で体を巡る血液や体液の分布が変わると(これは「体液シフト」と呼ばれ、昔から宇宙飛行に伴う体の変化として研究されています)、頭や脳にたくさんの体液が巡るようになって、頭蓋の内側の圧力が高まるせいではないか?・・・というのが、現在の有力な仮説です。
でも、宇宙飛行士が宇宙滞在をしているときに、本当に頭蓋内圧(脳圧)が高くなっているかどうかを測定した研究はありません。もし脳圧を測定しようとするならば、手術で頭蓋骨に穴をあけて圧力を測定するためのセンサーを埋め込んだり、背中から背骨の間に細い針を刺して「せき髄液」という体液の圧力を測定したりと、かなり大変な検査をしないといけないのです。

IPVIの研究チームは、血圧計と超音波検査を組み合わせて、大掛かりな検査をしなくても、簡単に脳圧を測定することを目指しています。
この研究により、宇宙での体の変化(脳圧の上昇と、それに伴う目の症状)がどのように起こるかを詳しく調べることができます。また、地上においても、頭のケガや脳の病気によって脳圧が高くなるような患者さんに対して、体に負担の少ない検査法として応用が期待されます。

わたしが宇宙に行ってから、脳圧が高くなったならば、もしかしたら近視用のメガネがいらなくなるかもしれませんね。
有人宇宙飛行が始まって50年経ちますが、まだまだヒトの体については分からないことばかりです。いや、むしろ宇宙に活動領域を広げたことで、生物としてのカラダの仕組みがより深く分かるようになってきたと言うべきでしょうか。
宇宙飛行士の体を調べることで、新しい発見が続々と報告されています。



 
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