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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

L-3ヶ月:船外活動訓練 その4

2017年9月29日

さて、船外活動は、2人の宇宙飛行士がペアになって行います。
ダイビングでも、「バディ・システム」といって、2人一組でペアになってお互いの安全を確認しますが、同じ考え方だと思います。

白い宇宙服に赤いストライプが入っているのが、EV1(イーブイ・ワン)。もう一人が、EV2(イーブイ・ツー)。通常は、経験の深い先輩飛行士がEV1となり、リーダー役を務めます。
2人で常に声を掛け合って、安全に正確に、効率的に作業を進めていきます。
海上自衛隊や米海軍で受けたの潜水訓練でも、「急がば回れ」で、確実な手順で焦らないことが一番大切であると、耳にタコができるほど叩き込まれたものですが、宇宙での船外活動でも、まったく同じです。
手間を省いてて楽をしようとすると、逆に大切な交換機器やツールにテザーをつけるのを忘れてモノをなくしてしまったり、後から再度同じ作業をやり直さないといけなくなったりするものなのです。

さて、パートナーの宇宙飛行士と、プールの中で訓練をしていると、突然インストラクターから通信が入ります。
インスト 「EV2、君の宇宙服に、気圧の異常を知らせるメッセージが出たぞ、さあどうする?」
水中用に改造された訓練用宇宙服には、異常メッセージを表示するディスプレイや圧力ゲージは付いていませんので、ここからはロールプレイングです。

EV2 「EV1、ちょっと作業を止めてくれ。宇宙服の気圧の異常メッセージが出た。実際のゲージの気圧表示は・・・」
インスト 「君がゲージを確認すると、通常の圧力を示している」
EV2 「宇宙服のゲージは、通常の気圧を示している。今から、カフ・チェックリストを調べる」
EV1 「宇宙服のゲージが通常の圧を示しているなら、たぶんセンサーの異常だな。カフ・チェックリストで、対処法を確認しよう。○ページ目だ」

カフ・チェックリストとは、船外活動中に異常があった場合に、すぐに対処法を参照することができる手順書です。すべての異常事態を網羅するような小さなノートになって、宇宙服の手首に装着しているので、このように呼ばれます。
自分の生命を守ってくれる宇宙服に深刻な異常があれば、普段は冷静な宇宙飛行士でも慌ててミスをしてしまうことがあるので、常に2人でサポートし合って、間違いがないかダブルチェックしながら、不具合への対処を行います。

時には、こんなシナリオも。

インスト 「EV2、今、EV1に聞こえないように君に話しかけている。今から、クルーレスキューのシナリオだ。気を失ったフリをしてくれ」
EV1 「こっちの作業は順調だ。EV2、そっちの状況はどうだ?」
EV2 「・・・(気を失ったフリ、気を失ったフリ)」
EV1 「EV2、応答せよ。・・・ヒューストン、EV2からの応答がなくなった。無線の不具合かもしれないが、本人の様子を確認する」
インスト「こちらヒューストン、了解した。われわれもEV2からの応答を聞いていない。大丈夫かどうか、確認してくれ」
EV1 「EV2の様子を確認した。目をつぶって意識がないようだ。船外活動を中止し、クルーレスキューを開始する!」

万が一、宇宙空間で、宇宙飛行士の一人が行動不能になってしまった場合を想定して、もう一人が宇宙ステーションの出入り口であるエアロックまで連れ帰るという訓練も行います。
自分の宇宙服と、相手の宇宙服とを、テザーという命綱でつなぎ留め、行動不能の宇宙飛行士の体を回りの構造物にぶつけたりしないようにコントロールしながら、エアロックまで連れ帰らなければなりません。宇宙ステーションの、どんな場所からでも、30分でパートナーを連れ帰ることができるというのが、技量認定の合格基準の一つです。



 
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