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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

宇宙での潜水病治療

2017年10月12日

昨日ご説明したように、事前に十分な体の準備を済ませて船外活動(EVA)を行うようにしていますので、宇宙飛行士が潜水病を起こす可能性はとても低いのですが、もし万が一、潜水病になった場合にはどうするのでしょうか?

船外活動を行うときに、宇宙服の手首に「カフチェックリスト」という、異常事態対処のためのはノート型の手順書を取り付けて、宇宙ステーションの外に出ます。ここで言う「異常事態」とは、さまざまに想定される宇宙服の故障はもちろんなのですが、宇宙飛行士自身の健康状態の異常(つまり潜水病)についても、きちんと対処法が示されています。

関節の痛みとか、頭痛などといった症状の有無や、その持続時間によって、「船内に戻ってから、管制センターで待機している航空医師と医学面談を行う」とか、「すぐに活動を中止して船内に戻る」とか、対処法が定められていますので、専門の医師に相談することなく、その場ですぐに行動を決めることができます。

いったん宇宙ステーションの中に戻ってくると、潜水病の診断・治療のための、より詳しい手順書が準備されていて、地上からのサポートが得られない状態でも、その場にいる宇宙飛行士だけで対処ができるようになっています。
医学的な診察のやり方や、その評価の仕方については、医師出身でない宇宙飛行士も、「医学訓練」として事前に練習を重ねているので、マニュアルに従えば、本当に潜水病に掛かっているのか、もしそうならどのくらいの重症度で、治療が必要なのかどうかを、とりあえず判断することができるのです。

もちろん、地上の管制センターでミッションをサポートしてくれる航空医師の手助けがあれば、より的確な処置ができます。実際にそんな状況になったならば、無線通信を使って地上からの助言を得ながら、病気の診断や評価を行っていくことになります。

さて、本格的な治療が必要な潜水病であるということになったら、どうしましょう?
地上の病院では、「再圧チャンバー」または「高気圧酸素治療」といって、耐圧性の特別な治療室の中で、患者さんを、再び気圧の高い環境に置きながら、酸素吸入をすることで治療を行います。

宇宙では、このような特別の治療設備はありませんので、宇宙服そのものを「再圧チャンバー」として活用することにしています。潜水病に掛かった宇宙飛行士を、宇宙服の中に入れたまま、酸素を使って加圧することで、治療を行うのです。
潜水病治療のために大きな圧力の掛かった宇宙服は、その後、船外活動に使うことは安全上できなくなりますが、宇宙飛行士の健康には代えられません。(宇宙服は、その後地上に戻して再整備をすれば、また使えるようになります)

初めてこの説明を聞いたときには、「可能性の低い潜水病について、対処法までよく考えて準備をしているなぁ」と感心したものです。
幸いなことに、実際に宇宙で潜水病が起こったことはありませんし、この「宇宙服型再圧チャンバー」の使用実績もありません。
ただ、ミッションに向けての訓練の一環として、宇宙服を使った潜水病治療の手順については、全員に対して実技を含めた訓練が行われています。



 
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