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2017年11月22日
以前にちょっとだけご紹介したように(コチラ)、ロシアでの「ソユーズ宇宙船の運行」に関する訓練は、(1)打上げ・軌道投入、(2)ランデブー・ドッキング、(3)アンドッキング・着陸の3パートに分けて、実施しています。
「今日は、最終試験前の最後の訓練機会だから、ノミナル(通常)の帰還のシナリオをやろう!」
教官の言葉に、ティングル飛行士が一言、
「ノミナル・・・って何でしたっけ?いつも何かしら不具合が起こってるんで、通常の帰還なんて言われても、やったことありませんけど」
もちろんジョークで、教官も苦笑いしていましたが、宇宙船に搭載されている機器が正常に作動していると、ほぼ全自動で、入力されたデータ通りに着陸できてしまうので、宇宙飛行士の訓練になりません。
「アンドッキング・着陸」のシナリオは、帰還用のソユーズ宇宙船に乗り込んで、宇宙ステーションを離脱する直前から始まります。
ハッチが閉まったところで、まずは宇宙服の気密のチェック。宇宙船が空気漏れを起こしたり、ときには不具合に対処するためにわざと空気を抜くような処置をすることがあるので、緊急時用の酸素で満たされたソコル宇宙服が最後の命綱になります。
引き続いて、宇宙船そのものの気密のチェック。異常が起こらなければ、宇宙服のバイザー(顔の部分)は開けて、宇宙船内の空気を循環させて呼吸することで、宇宙服のお世話にならずに地上まで戻って来ることができます。
ソコル宇宙服の気密チェック中。一時的に酸素を流して、宇宙服がパンパンに膨らませています。空気漏れがないことが確認できれば、万一宇宙船の中に空気がなくなっても大丈夫です。
ソユーズ宇宙船のシステムをチェックして、すべての準備が整ったところで、ドッキングのためのフックを外すコマンドを入力し、宇宙ステーションから離脱します。アンドッキングのための小さなエンジン噴射のタイミングや持続時間は、すべて制御コンピュータでコントロールされていますが、宇宙船のシステムがきちんと作動していることを、運行状況を示すデータや、船外カメラ、船長は中央席に備え付けられた潜望鏡を使って確認します。
「着陸用の酸素タンクの圧力が下がっている」
ティングル飛行士が、目ざとく不具合を発見して報告します。
「船内の圧力は上がってないな。船外(宇宙空間)に酸素が漏れてるってことだ。ニモ、バルブを閉めろ!」
「了解」
シュカプレロフ船長の指示通りに、わたしが対応するバルブを閉めると、ティングル飛行士がすぐに状況を評価してくれます。。
「圧力安定、リークは止まったみたいだ。大気圏突入後にバルブを開けなければいけないので、忘れないようにしよう」
宇宙飛行は初めてでも、老練なテストパイロットのティングル飛行士は、あとあとの処置についても抜かりありません。
このあたりの不具合は、まだまだ小手調べ。みんな、内心では、「ああ、いつものやつが来たね」という感じです。宇宙ステーションからの離脱が終わったら、次は山場のメインエンジンによる「脱軌道噴射」が待っています。
(続く)
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