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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

そして、リハビリの毎日

2018年8月10日

バランス感覚がまったく狂って、目の前がグルグル回転するような状態でヒューストンに戻ると、すぐにリハビリが始まります。
ロシアなどを中心に専門家によっては、地球に帰還した直後は、あまり激しい運動は避けるべきであると言う人もいますが、現在のNASAのプロトコールでは、医学データ取得のために、帰還してなるべく早い時期に「体力測定」を行うことになっています。腕立てや腹筋、懸垂などの種目を体の限界まで実施するのは、かなりの負荷ですから、「体力測定」を行う日までのほんの2、3日の期間でも、少しでも体を動かして慣らしておかないと、ケガのリスクが高まります。

幸いなことに、人間の体の適応力というのは素晴らしいもので、バランス感覚の混乱によるめまいの症状は、急速に改善します。その人ごとの体質もありますが、数時間経過するだけでも症状が軽くなっていくのを自覚できますし、24〜48時間もすれば、多少のふらつきはあっても、視覚情報をもとに、しっかりと歩くことができるようになります。

この「視覚情報をもとに」というのが面白いところで、バランス感覚が完全に戻っていなくても、目で周囲を見渡すことで自分の姿勢がどうなっているのかを確認することで、まっすぐに立ったり、歩くことができるのです。
ここで目を閉じてしまうと、視覚による補正が効かなくなり、まっすぐ歩けなかったり、ひどければ知らないうちに倒れてしまったりします。

この「バランス感覚の混乱」、「めまい」といった症状は、地球に帰還して1週間も経つと、自覚的にはほとんど気づかないほどまで改善します。でも精密な医学検査を受けてみた結果、自分ではまっすぐ立っているつもりが、重心がフラフラと揺れ動いていたりすることが確認できました(このふらつきは、目を閉じて立つと、より大きくなります)。

興味深いのは、自分ではすっかりバランス感覚を取り戻したつもりで元気に歩き回っているのですが、1日の終わりには脛の筋肉や足の裏に、強い筋肉痛が出ることでした。おそらく、重心が完全には定まらずにフラフラするのを、視覚情報をもとに、両足で踏ん張って体を支えていたのではないかと考えています。
宇宙滞在中に毎日、筋力トレーニングをしていたので、こうやって重力環境に戻って来ても、足で踏ん張りを利かすことで歩き回ることができましたが、そうでなかったら転倒の危険が高く、ここまで自由に行動できなかったかもしれませんし、早期にリハビリ・トレーニングを開始することもできなかったかもしれません。



 
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